一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

カレーうどん

毎年この時期は、眠い。猛暑も山を越え、おやっ少し楽かな、と感じるころ、この症状がやってくる。夏のあいだ暑さに焙られた躰に、疲労が蓄積している感じだ。六時間睡眠では少々足りぬ体調となる。何時間眠ったところで、どなたにご迷惑をお掛けするでもな…

平民

戸川秋骨『隨筆 文鳥』(大正13年6月、奎運社) 刺身を食して、魚はまずまずなんだが、惜しいことに包丁がいけないと云い当てるかたは、たまにはあろう。が、包丁を研いだ砥石の良し悪しまで、刺身の味から指摘した人が、江戸にはあったという。 また京都に…

残暑

午前、散髪屋。珍しくも明日、来訪者予定。ゴミ屋敷状態は今さら間に合わぬとしても、せめて髪くらいは。 マスターは噺上手。ご近所のワクチン接種状況、パラリンピックの話題選手、道路拡幅計画に伴って不動産関連の大手各社が盛んに近隣を徘徊している様子…

ご案内

――YouTubeチャンネル紹介(ご案内)―― 先般、口上にて少々申しあげましたが、お若いディレクター、ko-hさんによります、YouTubeチャンネルが開設され、まだ助走段階ではありますが、始動しております。 画像・音声ほか編集いっさいは、ko-hさんにおまかせ状…

辻褄

迫水君という店員さんが、ファミマに長く勤めている。髪の長い長身イケメンで、俯き加減に、低く澄んだ声で話す。物静かな性格のようでもあり、じつは爆発性の物質を内に秘めているようにも見える。 「君、ロックかジャズ、やってる?」 ある時、ほかにお客…

名訳

中野好夫(1903~1985) 清富に限る。中野好夫はしばしば喝破したものだった。 清貧を尊ぶことを、とかく日本人の美徳または美意識のように云うが、本心は富裕でありたい。だが富はとかく腐にも濁にも汚にも堕しやすい。濁富と化すくらいなら、しかたなく清…

風流

『清貧に生きる』上司小剣(昭和15年、千倉書房) 風流人と自認するとある分限者(大金持ちですな)、大枚はたいて年月かけて、三種の神器とも申すべき珍品をついに入手。いわく、釈迦が用いた鉄鉢、孔子が艱難の旅に携えた杖、太公望が渭水北岸に釣糸を垂れ…

お気の毒

「ラジオ深夜便」も無事終った。夜なべ作業で、厚紙・段ボール・その他紙に分類して、それぞれ十字に紐掛けしてあった束を、所定の場所へと運ぶ。十字路のひと隅、緑の金網の前の道路標識の根かただ。どうやら今朝は私が一番乗りだ。私でなければ、いつもハ…

難問

目下、少々思い迷っている案件がある。微妙な、つまり非論理的な飛躍判断をどう跨ぐかの問題なんだけれども。 コロナ禍前からさして苦にもしていなかった洞穴生活だが、一日の三分の一、うっかりすると半分近くも、パソコン前か机周りにいる。台所には日に二…

論理

『芥川賞・直木賞150回全記録』(文春ムック)より、無断で切取らせていただきました。 口火(ツカミ)は野坂昭如、〆(トリ)が五木寛之という講演会だったわけだが、主催は『早稲田文学』で、司会というか冒頭挨拶というか、編集長だった立原正秋さんが、…

風の頃

『芥川賞・直木賞150回全記録』(文春ムック)より無断で切取らせていただきました。 講演会のトリは、五木寛之さんだった。スペイン戦争のお噺で、歴史に埋れた市民の運動などをご紹介された。学園紛争真只中だったから、学生聴衆への注意喚起、ありていに…

サイン

『メタモルフォーゼ』より、無断で切取らせていただきました。 絶世の美女や天下の二枚目、美形役者の悪役てえもんは、ひときわ映えますな。アラン・ドロンの悪役や、マレーネ・デートリッヒの危険な女なんざ、たまりません。例えが古いね、どうも。 映画や…

お鞄

新庄嘉章、私が拝見したのはご定年直前。もっとご高齢でいらっしゃいました。 野坂昭如さんには、鉄板ネタのツカミというか、ご自身お気に召しておられたらしい噺の枕があった。 ――大学になんぞ通うつもりはなかったのが、急遽受験することに。文学部事務所…

ストリップ

『芥川賞・直木賞150回全記録』(文春ムック)より無断で切取りました。 野坂昭如さんが、学生向けのご講演で、こんなふうにおっしゃった。直木賞受賞からほどなくで、話題沸騰の流行作家であられた時分、つまり悪振りが売りだった頃のことだ。晩年であれば…

線路

雨、小止み。ブランコの少女はいない。 拙宅裏手が区立の児童公園で、トイレや風呂場から網戸越しに隅ずみが視渡せる。 いつの頃からか、若い人や子どもの年齢がさっぱり視分けられなくなっているが、おそらくは中学生ひょっとすると小学高学年ほどの少女が…

レガシィ

こぢんまりオリンピックを標榜してたんじゃなかったでしたっけ。瞬く間に予算は怪物的膨張、と話題になったころ、レガシィなる語が……。ありふれた英単語なんでしょうが、私の耳にはとんと馴染みなく、むろんわが半生において用いたことのない語でした。跡地…

省略

折れた煙草の 吸いがらで あなたの嘘が わかるのよ 誰かいい女(ひと) 出来たのね (作詞:山口洋子、2004年) 煙草のもみ消しかたが、男の心移りを女に、じかに思い当らせたわけではありますまい。 男だって日頃から、気取られまい悟られまいと、素振りに…

代表

深沢七郎『庶民列伝』(新潮社)から、無断で切取りました。 信州の総合病院で、内科勤務医だった南木佳士さんは、他科病棟に深沢七郎が入院してきたと知って、しばし迷ったのち勇を鼓して病室を訪ねた。 「ご気分のよろしいとき、お話を伺いに上ってはいけ…

弁当

まだ洗う前。いつも完食。ご馳走さまでした。 会社員として頻繁に出張していたころ、たとえば西へ向うとしたら東京駅で、とんかつ弁当とお茶を買込んで、新幹線ホームに上るのが常だった。 六時ちょうど発か六時十二分発に乗るわけだが、自由席車輌に乗車す…

夜咄<口上>

――口上―― 残暑、感染症、台風シーズンと、まだまだ心配去らぬ頃おいなれど、暦のうえでは秋にございます。 どちらも様におかれましては、ますますご健勝にてお過しのことと喜ばしく拝し、祝着至極に存じあげます。 おかげさまにて当ブログも、本年五月三日に…

ひぐらし

秋にて候。

旧盆

商品持帰り用の紙袋から二枚取り。表と裏。 久しぶりにパスモを使った。池袋西武百貨店へ。一階の名店街。春秋のお彼岸は両口屋是清。もう二十五年このかた不動だ。年末は正月食品としても邪魔にならぬようなものということで、こゝ何年かは浅草今半。両店の…

最後のひと巻

台風一過、東京はなんとも晴れ渡ったものだ。全国的に、暑いんだそうだ。 台所にも気乗りがしない。ちょうど煙草も切れそうだ。ついでにおやつか軽食でもと、ファミマへ向う。あっ、マスク忘れた。煙草以外の買物をするなら、袋も必要だ。玄関先や木戸を出て…

潮目が変る

林忠彦写真集『日本の作家』より、一部分を無断で切取らせていただきました。 志賀直哉は開戦直前まで、今こゝで戦争してはならぬと考えていた。が、日本は開戦ししてしまった。開戦してしまったからには、この戦争、なんとか負けずに了って欲しいものだと念…

気持

二〇一七年、ヘッドコーチに就任したトム・ホーバスは抱負を問われて、答えた。 「東京オリンピックで、アメリカと決勝を闘う」と。 会場は笑いに包まれた。その意気軒高たるや大いに好しとの、激励だったろうか。あるいはこれもアメリカン・ジョークにちが…

ラストスパート

マラソンの実況放送で、優勝を競う先頭争いばかり伝えるのが、不満だ。優勝者ゴール後、まだ後続選手が次つぎゴールしているというのに、そっちのけで優勝インタビューをしたがるのに、腹が立つ。「レースを映しやがれ、レースを!」画面のこちらで、毎回の…

判断ミス

今朝がた、地中も異様に暑かったのだろうか。ミミズの行倒れがひどい。 道路から木戸まで、拙宅敷地前にちょいとしたコンクリート空間がある。車を所有したこともないくせに、いっちょ前に駐車空間があるのだ。 木戸を一歩入れば、私のずぼら空間。玄関周り…

暑い、熱い、

広島駅を降りたら、広電がちょうどいゝ距離だけれども、あえてタクシーを拾う。街の空気を少しでも察知したい。 「ドライバーさん、今年もカープ、いゝようじゃないですか」 当然だと云わんばかりの応えが返ってきて、何かしら話してくださる。でもこれは、…

颯爽と

画像丸ごとは無理です。ほゞすべての写真について、使用料がガッチリ決ってまして。 日々の過しかたに、もともとテレビは含まれていなかった。興味あるニュースだけ、観たい映像だけ、ネットで拾えれば、老人の情報受容能力には十分と考えていた。だのにコロ…

気づく

「細かいのが四十と、ひいふうみい……八円、お改めください。あとはこれで崩してください」 ファミマやビッグエーでのレジだ。小銭入れがジャラジャラしてきた時には、買物まえに百円未満がいくらあるか確かめてから入店する。両替という手続きなしに、自然循…