一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

境界

お向うの、粉川さんご門柱脇のクローバ。開花直前のツボミ状態だし、花が売りの草でもないから、気づきにくい。生きてるうちに、しかと眺めておこうという気にさせられる。 学生諸君を誘って、駒場の日本民藝館の展示を観に行ったことがあった。近現代や西洋…

ヒント

勁草書房版、講談社文庫版。 品切れ、もしくは絶版が何年か続くと、どこかの出版社から新版が出る。どこ社版で、もしくはなに文庫で読んだかで、読者の年齢または本書に出逢った年代が知れるという、名著中の名著。 中央公論社版(1959年刊)でお読みになら…

ひと坪

ひと坪ビフォー。 また寝そびれて、朝が来た。 夜通し煙草とカルピスだけでは、躰に悪かろう。気づけば空腹でもある。いくらなんでも炭水化物はやめにして、野菜の煮物と目玉焼と6Pチーズくらい腹に入れて、なんとか寝ちまおう。 ひと頃であれば、ちょうど…

くぐつ

真鍋呉夫(1920-2012)、長らくご逗留中。 心に残る文士であられた。 駆出し編集者だったおり、真鍋呉夫さんの原稿を、いたゞきそこねたことがある。 句集『雪女』で藤村記念歴程賞と読売文学賞とを受賞されて、お見事な大復活をとげられるよりも前のことだ…

シャン!

桜はさっぱりと調髪完了。花梨は只今散髪中。 一昨日、植木職の親方に入っていたゞいた。昨日は曇天で、一時雨も降るとの天気予報だったので休み。本日はからりと晴れあがり、下草処理も含めて、すべて完了の予定だ。お若い衆との二人三脚で、まことにお見事…

君だけ

みんなみんな、平等な命だと、思ってますよ。いちおうはネ。 それぞれの命に、貴賤の別はないと、思ってます。すべての因果を理解するだけの見識が当方に不足しているだけで、じつはみんなみんな、経緯だの必然性があって登場したにちがいない命だと、ホント…

婿殿に

黒澤明映画『乱』に、主筋にはいさゝかも重要ではないが、大好きな場面がある。 媚びへつらいの太郎・次郎とはちがって気骨青年三郎は、父である大殿(おゝとの)の機嫌をそこねて、勘当・追放の身となる。その心映えを多とした隣国の武将藤巻信弘(植木等)…

今しかできぬ

JBA 三屋裕子会長から 若者が、今しかできぬことに無我夢中で励む姿は、清々しいもんだ。年寄りがさように感じるのは、舞台というものが誰にでも公平に与えられるものではないと、承知しているからだ。 オリンピックで銀メダルを獲得したナショナルチーム全…

顔ぶれ

深夜の小公園に人影はない。風もなく、八重桜がひと株、黙って立っている。今を盛りとたわわに咲き誇っているが、若葉も勢いよく芽吹いてきているから、花の独り舞台という姿ではない。 その名も児童公園というのだから、深夜に人影がないのは不思議ではない…

ほの渋い

佐藤洋二郎『Y字橋』(鳥影社、2022) あの人は、あの後どういう人生を送られたのだろうか。お幸せだったろうか。今もどこかで、おすこやかにお過しだろうか。 一度だけでも、お会いしてみたい気もする。相手が女性の場合は、とくに。 伝手をたよって手蔓を…

さて次は

三好南穂(背番号12) 今シーズンWリーグ、優勝はトヨタ自動車アンテロープス。 主将三好南穂はすでに、今シーズン限りでの引退を表明。 なおシーズン通しての部門別表彰において三好は、スリーポイント成功率・フリースロー成功率の二冠獲得。 スリーポイン…

四半食

いく度も書いたが、独居自炊暮しとなってから、一日二食生活を続けている。 食事に要する時間を節約したいという、バチ当りな理由もあるにはあった。が、それは付足しで、本意は食生活の充実だ。 そのおかげかどうか、入院療養を余儀なくされて手術を受け、…

邪魔

高橋かおり写真集『メタモルフォーゼ』(渡辺達生撮影)より切取らせていたゞきました。 刑事さんって、ホントに二人一組なんだとこの眼でたしかに視た経験が一度だけある。 職質ではない。職質については私立中学の生徒だった関係で、中間テスト後の試験休…

雨あがる

肌寒さがぶり返したような数日だった。明日からまた、暖かくなるらしい。 雨はあがった。草木はまだ、ぐっしょり濡れたまゝだ。草むしりには適さない。で、洗濯と買物の日とする。 ずぼらを決めこみ、溜るにまかせてきたものを搔き集めて、大袋ふたつに詰込…

こんなもん

これほど引きこもって、なるべく世間と関わらずに、ちっぽけに暮しているのに、こんな隅っこにまで世界情勢が影を落してきたかと、一瞬は考えた。 大衆需要に応ずるべく、有名メーカーが研究・調整して商品化したものを、良いの悪いの申したところで、いたし…

暴虐

低気圧の居座りに加えて、台風一号の接近だという。一号ですぜ。 ひと桁号台風なんてもんは、フィリピンをかすめても、台湾に近づくことすらなく、北東へと進路を急カーヴさせて、北太平洋へと消えてゆくもんでしょうに。 日本人は毎年台風に見舞われ、警戒…

経過

【さくら名所100選】nippon.com より無断拝借しています。 熊本大地震が、二〇一六年の今日だったそうだ。こういう季節だったかと、あらためて想う。 当時、熊本市ご出身の友人にお見舞いを申しあげ、ご家族ご友人の安否をお訊ねしたところ、ひどい実害をこ…

花道

まず、なにが起きているのか。噺はそれからだ。 今シーズンのWリーグも、ファイナルの2(もつれゝば3)試合を残すのみとなった。わがレッドウェーブと対戦するのは、強敵トヨタ自動車アンテロープスである。 コロナ禍に見舞われ、レギュラーシーズンの全試…

ゴールポスト芸術論(小説の起源⑤)完

今宵も、老いの繰りごと。昆林斎胡内にございます。 浪漫主義、ロマンチックって、どういうこと? 正面切って訊ねられますと、答に窮します。ロマンっていうから、恋愛的なことかしらん? 専門的にご研究の先生がたは、どうおっしゃるか存じませんが、まぁあ…

機嫌指数

世間さまとのお付合いやお取引きを、おゝかたご辞退申しあげていると、ニュースや流行に左右される機会も少なくなって、さぞや心おだやかに過せていることだろうと、誤解される。 とんでもない。暮しぶりの振幅が小さくなろうが、行動半径が短くなろうが、気…

どうかして論(小説の起源④)

明治二十年代は紅露逍鴎の時代。文学史研究の業界用語では、さようにおっしゃいます。尾崎紅葉、幸田露伴、坪内逍遥、森鴎外の四人が、文壇の中心人物として充実した仕事をなさった時代、という意味だそうで。 しかしその二十年代はまた、前回申しました浪漫…

再生力

今日も、ビタミンD 形成のための日光浴散歩、と思ったのだったが、玄関出しなにいきなり驚かされた。なににって、ネズミモチである。 怪しげな素人剪定をしたのは、一昨日のことだ。当方の生活不規則問題があるから、正確に申せば、丸二日と半分である。伐り…

花形青年論(小説の起源③)

泰平の眠りを醒ます蒸気船、たった四杯で夜も眠れず。 神奈川県は浦賀の沖合い、ある日突如として、それまで視たこともない巨きな、しかも船影黒ぐろ鉄の船が一二三と四艘も、不気味な黒煙をたなびかせて現れました。 世に云う黒船来航。嘉永六年(1853)、…

データ無し

ウチのとは、ちがうなぁ。 この悪癖、なんとかならぬものか。就寝予定時刻になると、表へ出たくなる。ここ数日の好天続きのせいだ。午前の陽射しが、まことに気持よろしい。 すこしでも陽射しを浴びるよう心掛けぬと、ビタミンD が形成されない。 食物だけで…

小人論(小説の起源②)

坪内逍遥『小説神髄』、明治十八年刊行。わが国の文学評論に「小説」の文字が記された最初ということになっております。 明治という新しい時代、文学もこれからは、江戸時代までの約束事をうち破って、文明開化しなければならない。勧善懲悪ですとか因果応報…

我流

これが、 こうなる。 本日も好天。昨日の残り作業。 鳥たちのしわざで拙宅に来着したネズミモチは、すべからく招かれざる客かといえばそうでもなく、歓迎され共存する樹がひと株だけある。たまたま玄関前の右脇に生立ったため、門前を守る仁王のようで、これ…

吉良常文学論(小説の起源①)五夜連続

お噺、物語――。自分とは異なる、そしておそらくは作者その人とも異なる人物が出てきちゃあ、あんなことこんなことして、こんなふうになる。これを小説というんだと、初めて知った日を、憶えておいででしょうか。 思われませんでしたか。じゃあ「大説」はどこ…

いたち

これが、 こうなる。 朝、就寝前の三十分作業。枝刈りと草むしり。 寒いうちは、勇気が出なかった。あらゆる木の枝草の芽、こぞって元気。もう待ったなし。当方も行動開始せねばならない。 とはいえ、年寄りの冷や水は墓穴の一丁目。日に三十分の鉄則を維持…

行かない

中原美紗緒(1931-1997) 美紗緒さんの、ある曲間トーク。 ――女から男への、別れの捨て台詞。齢によって変ってきますよね。十代のころ。「もう無理。嫌いになったの。別れましょっ!」 二十代のころ。「ごめんね。ほかに好きな人が、できちゃったの」 三十…

正しい

鳴り物入りで期待されて参戦しながら、あんがい出番に恵まれぬものも、ひょんなきっかけからふいに参加して、その後長く活躍し続けるものもある。 プロスポーツ選手のことではない。わがカップ類のことだ。 インスタントのコーヒーや紅茶、粉末スープほか、…