一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

寝台の穴

毎度、変り映えもなく、胡内にございます。 敗戦となりまして、八か月あまり経ちました昭和二十一年の四月二十九日、復員命令がくだりました。武昌にある武漢大学の階段教室が、大相撲の升席のように狭く区切られていて、そこで手足を伸ばすこともできずに寝…

役目

『江古田文学』109号が届いた。ということは、数日のちには書店配本されるのだろう。今号特集は「創作の「いま」を見つめる」。また大きく出た、意欲的特集だ。 一九九〇年代から二〇〇〇年あたり生れの若い書き手たちによる、小説や詩や評論がみっしり掲載…

つかの間

本隊到着。 桜に気を奪われているうちに、下の連中は着々と作戦を遂行している。 様子見の斥候兵一輪だけが、飛び抜けて早く開花して見せた(3/24日記)。案のじょう先兵の宿命というべきか、ぶりかえした寒気と雨。わずか二日間の開花で、種子を結ぶことも…

国語学

みのひとつだに。 久方ぶりに池袋まで出掛ける気になった。ロフトでポスター用の額縁(フレーム)を贖うつもりだ。 過日、お若い友人がたに誘っていたゞいて、練馬区立美術館まで「香月泰男展」を観に行った(3/27日記)。記念に同展ポスターを一枚、買って…

風が

風が来たから往くわよ、だって雲なんだもの。 欠礼したまま溜っているお礼状を、少しでも挽回しようと、夜鍋した。 「ラジオ深夜便」からは懐かし歌謡、吉永小百合さん特集が流れてくる。 「いつでも夢を」「寒い朝」、定番鉄板のオープニング。「キューポラ…