一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

思い出す

釜めし・焼鳥「田毎」女将さん。(デジタル日刊ゲンダイから無断で切取らせていたゞきました。) 盛り場といえば、新宿・池袋で生きてきた。その周辺、巣鴨・高田馬場、大久保・中野も、少しは知っている。社会人として動きがもっとも活発だった年ごろでさえ…

生意気

テアトル・エコー第44回公演パンフレット、1973.3.15-4.2 新宿紀伊國屋ホール。 観劇日が判らない。不覚にも、チケット半券が残ってないのだ。場所が新宿だけに、跳ねたあとジャズ喫茶にでも寄ったりしているうちに、紛失してしまったものだろうか。この時期…

残念

NHK アーカイブ映像から、無断で切取らせていたゞきました。 この画像を観ただけでピンとくるかたは、1970年当時、相当に入れこんだかただろう。ヒント。国立近代美術館所蔵のモダンアートではない。 NHK 総合テレビで夕方六時五分から放送された人形劇『ネ…

お願い

サミットストア「プチロースかつカレー」530キロカロリー、321円(税込) およそ月一の、ユーチューブ収録日。夕刻、ディレクターさんが機材トランクを提げて来訪くださる日だ。今の私には、大切な仕事のひとつである。 いつもの月並ゲン担ぎ。仕事に出る日…

トロイ

コロニー突如大崩壊、パニック! 空模様の好い日には、かつ午前中に眼醒めている日には、かつ気分が好い日には、十五分庭仕事。 ひと坪草むしり何回かぶんの収穫(?)が、いくつかの枯草山となっている。そのうちの二つを、地面の穴に埋め戻す。 なにせ生命…

いたゞきもの

若き友人の川仲さんから、サクランボを頂戴した。ご郷里から山盛りに届いたので、ほんのお裾分けとの口上だったが、独居老人には過ぎたる量だ。毎夕食後に少しづづいたゞいてきて、これが最後だ。 彼女は写真学科の大学院生で、写真家志望というよりは、写真…

機嫌

リタイア後を菜園や庭手入れに生きる、学友大北君が、じゃが芋と鷹の爪を贈ってくださった。 つい先日、玉ねぎと蕪をお贈りいたゞいたばかり。重ねがさね、ありがたい。 玉ねぎはこゝぞとばかりに、普段では考えられぬほど豪勢に使わせていたゞいて、ほとん…

虚実喪失(二十世紀の台詞たち⑥)【6夜連続・最終夜】

今宵もお運びさまで、ありがとうございます。昆林斎胡内にございます。 とある劇団の稽古場で起きました、ちょいとした事件のお噂。公演日迫りまして、稽古もいよいよ熱を帯びようかというとき、なにやらわけあり気な六人が闖入してまいりました。訊けば彼ら…

作者を探す(二十世紀の台詞たち⑤)【6夜連続】

今回もちょいとした、お古いお噂をひとつ。昆林斎胡内でございます。 いずれの芸術分野におきましても、二十世紀は懐疑の時代、疑いの時代でございました。 画家たちは色や形を疑いましたですな。音楽家たちは音色やリズムや音階や和音を、疑いましたようで。…

ゴドー(二十世紀の台詞たち④)【6夜連続】

性懲りもなくお古い噺を申しあげます。昆林斎胡内にございます。 いかなる才能人も、先行者なしに世に現れた試しはございません。ベルリンの小劇場にて『動物園物語』観劇の帰り途、「待てよぉ」と足を停めるほどの観客であれば、おそらくは先行するあるお芝…

バラスト(二十世紀の台詞たち③)【6夜連続】

またこの顔か。申しわけございません。昆林斎胡内でございます。 今日では不条理演劇なんぞと称ばれまして、辻褄が合わない、理由・動機に見当がつかない、奇妙な設定やら展開やらをもった芝居を、多くのかたが面白がってご覧になる時代となりました。 しか…

動物園(二十世紀の台詞たち②)【6夜連続】

あい変りませず、お古い噺を申しあげます。胡内でございます。 一九五九年に突如現れまして、アメリカ演劇の旗手と目されるまでになりますエドワード・オールビー。その衝撃的出世作『動物園物語』とは、かようなお芝居でございました。 ――所はニューヨーク…

世に出る(二十世紀の台詞たち①)【6夜連続】

浮世ばなれの昔噺にて、お耳を汚します。昆林斎胡内と申します。 わが国近代の文士がたは、諸外国の文学をよぉく勉強なさいまして、上手に摂取いたしました。しかし何事におきましても、追いつき追いこせと励みます者の哀しさ。とかく急ぎ足にて事を運ばねば…

困る

観音さまがベッピンさんでよろしいのか、という問題。 金剛院さまでは、本堂から裏手の霊園へと辿ると、右手にひときわ高くに視上げるべき観音立像の塚がある。 手前の左右で、三角形に尖った頂点を上空に向けているのは、彼岸と俗世とを隔てる急峻にして峨…

豊か

飯茶碗として使っている丼に、ヒビがひとすじ入っていると、しばらく前から気づいている。もうニ年にもなろうか。 炊事や洗い物のさいに、粗雑に扱っているつもりはないが、かといってとりわけ丁寧に扱っているでもない。人さま並に、洗い桶や水切りボックス…

いづれが

いづれがと問はず遍照夏のみち。 いかに用向き外出のついでとはいえ、隣街の浅間神社にお詣りしたくせに、菩提寺さまは後回しなんぞということが、あるもんじゃない。しかもこちらさまにも、先延ばしにしてきた用件があるのだ。 まずは江古田まで行き、雪華…

指定

久しぶりに江古田を歩く機会に恵まれたので、約束の刻限よりもだいぶ早く到着するように出掛け、浅間神社にお詣りした。 駅前商店街やビルのテナント店に関しては、猖獗を極めたとすら云いたいほどだった絶頂期こそさすがに過ぎたとはいえ、あい変らず顔ぶれ…

文学入門

1と7が含まれてさえいなければ、数字はこんなに丸っこい。「ブックオフ江古田店」さまウィンドウ。 学生サークル「古本屋研究会」の散策。江古田駅周辺の四軒を訪問ののち、池袋に移動。ホームグラウンドの雑司ヶ谷「古書往来座」さまへご挨拶。 午前中は…

お茶目

一昨日の目薬噺のつづき。 目薬商品にはすべからく、小瓶の傷みや紛失を防止するための、ビニール製小袋が付属品としてセット化されているようだ。その袋に収めて、几帳面な人であればさらにパッケージ箱に収めておくだろうから、小瓶は横たえられた姿勢で保…

いっ!

「いっ!」。自前で飲むようになって半世紀近い。ボトルサインはこれ一本でやってきた。地元のスナックであれ、新宿であれ、六本木であれ、酒場のキープボトルについて、これ以外のサインは私にはない。 南大塚の「ケニーズバー」が、今日で店を閉める。最終…

時ならぬ発覚

左:サンテPC(参天製薬)、右:マージナル®抗菌AZ(ゼリア新薬工業) この齢まで、さいわいにしてあまりご縁がなかったために、無知・無頓着でいられたもののひとつに、目薬がある。 このところ疲れ眼がひどい。引籠り生活がつづき、読書時間と台所時間と、…

うしろの正面

じつに久かたぶりに、芥川龍之介の短篇をいくつか読んだ。 今回は、評価高い『蜜柑』が書かれた直後、大正八(1919)年の作品群だ。初期作品に顕著な、シテヤッタリのお茶目な機知は薄れ、かといって晩年の憂鬱症はまだ発していない時期である。 とはいえ『…

梅雨冷

肉じゃがの鍋みはりをり今朝の梅雨 このところ台所ばかり書いている気がしてスクロールしてみたら、果せるかなそのとおりだった。 いかに世間さまとの接点が乏しいか、外出していないか、社会生活していないかを如実に物語っている。なかば望んで引籠ってい…

その前に

手抜き家事、ということに真剣になれるのも、わが来し方が手抜き人生だったからではあるまいか。きっとそうだ。 一食ごとに毎回手をかけるのは、玉子を焼くことと、三杯酢の酢の物か酢味噌和えのぬたを作るていど。あとは日持ちのする作り置きか買い置きの菜…

多肉

樹木にも山野草にも石にも、それぞれ短い中途半端な期間だが、生半可な興味を抱いたことがある。が、多肉植物・サボテン類にだけは、興味が湧かなかった。慙愧に堪えない。 養分豊富な土地にも水分豊富な土地にも、それらをふんだんに欲しがる植物が栄える。…

桃太郎

もう一丁、アガリ! 自炊老人の食事にはバランスが肝心。体裁は二の次だ。 食べものの好き嫌いは元来ほとんどないが、小学校の給食では、ヒジキだけがどうしても食べられなかった。それが今では、四季をとおしてヒジキを炊く。判らぬものである。そのことは…

一年中

一丁アガリ! 一年をとおして、カボチャを食う男である。 今は国産食材。品うすの季節となればニュージーランド産が出回る。さらに季節が移ればメキシコ産へと切替る。とやかく申せる身分ではない。どこ産だって、ありがたくいたゞく。 シンプルイズベスト、…

怪しげ

「なんだこのジジイ、怪しげな奴…」「知らんぷりしとけよ!」 規制もゆるくなって、友達と愉しく登校するのである。ところが道端に、今時分こゝにいてはならぬ、怪しげなイキモノがいる。 雨はあがった。空青く、陽光さんさん。空気さわやかな午前八時。余所…

事故回避

6月1日の花はサツキツツジ、花言葉は「協力を得られる」だそうだ。 午前四時半をまわり、昨夜から五時間あまり放送されてきたNHK「ラジオ深夜便」もそろそろ店仕舞いにかゝろうかというころ、今日の花と花言葉が紹介される。これから一日を始めるリスナーが…

情報

そういえばまだ、アンテナが付いたまゝだな、拙宅も。テレビを遠ざけて、流行や世間の情報に疎くなるどころか、進んで遮断するかのように生きているのに。情報……。 島村抱月の滞欧日記を調べたさいの、複雑なというか皮肉なというか、キテレツな感動を忘れら…