一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2023-01-01から1年間の記事一覧

大つごもり秘儀

ここ一朴之宮大祭祀殿(巷での愛称は物置)では、例年大晦日の行事である「式年鍋替えの儀」が、つましくしめやかのうちにも古式ゆかしき恒例に則り、催されました。 儀式次第を知る者は、伝承者たる一朴翁わずか一名のみという、世にかくれた秘儀中の秘儀で…

山崎街道

司修さんによる版画である。いく十周年目かの「風花」開店記念日祝賀パーティーにて、引出物として頂戴した。 モデルはお店の守護猫だ。ある日の開店前、ママさんが扉を開け放ったまま掃除していたら、通りかかった猫がそっと店内を覗き込んだ。オヤッ、どこ…

手抜き迎春

どうしてくれようか。あれもこれも、間に合わない……。 昨日、冷蔵庫が満杯となった。わが買出し食品と、かさみやさんからご送付いただいた予約食品とが揃った。年越し近しの気分が湧いた。気分だけだ。食糧以外の年越し準備は、なにひとつ片づいちゃいない。…

正月届く

かさみやさんにお願いしておいた正月食品が、今日届いた。 元日といったところで、たかが大晦日の翌日に過ぎない。両親が他界してからというもの、とくに御節料理を用意したことなどはない。 昔はご近所への年始廻りという風習があった。少し離れた親戚同士…

徹夜明け

まがりなりにも社会人だった時分に較べれば、わずかな枚数しか年賀状を準備しない。郵便局にて購入する枚数を、昨年よりまた十枚減らしてみた。思わぬかたから頂戴して、返信が必要な事態にでもなったら、そのときに必要枚別だけ追加購入して間に合せようと…

歳末感謝大買出し

用件が三つ以上溜らぬうちは、外出したくない。指を折れば、五つも六つもになった。やむをえない。 まずはわがメインバンクたる信用金庫にて通帳記入。ギャラ振込んどきましたのでヨロシクとの連絡をいただいたまま、ものぐさを決込んでいた案件があった。こ…

こんなもんです

「子どもは寝る時間ですよ」母さんに云われて、いったんはベッドに入った兄妹だったが、遠くから切れぎれに聞えてくる笑い声や音楽に起され、窓辺に寄る。声や音楽は、かなり離れた隣家から聞えてきていたのだった。 「子どもたちが唄いながら木の周りを回っ…

ガラス瓶

週に一度の資源ゴミ回収を思い出せば一目瞭然だが、ガラス瓶というものに接する機会がほんとうに少なくなった。 缶珈琲をよく飲む。スーパーでディスカウント品をまとめ仕入れして、冷蔵庫に切らさぬようにしてある。外出中やお湯屋さんからの帰り道やコイン…

色の冬至

昨日に引続いて、ケヤキ樹の噺。 わが町にも、通りすがりにふと足を停めることのあるケヤキがいく本かある。いずれも江古田浅間神社の大ケヤキには、貫禄の点で一歩譲らざるをえぬが、それぞれの風情を見せている。まず駅南口からほどなくの公園には、中央に…

登山口

江古田には富士山がある。 江古田駅に降りるのは、大学祭以来だから、五十日ぶりくらいになる。日昼の陽射しは季節外れの穏やかさで、まず北口の浅間神社に詣でた。拝殿の背後は樹木がこんもりと繁る小高い山で、富士山となっている。国指定の重要有形民俗文…

裏の顔

隣家との境界塀ぎわ。今朝の模様です。 わが草むしりの日常活動において、眼こぼしの特権を与えられているのを好いことに、我がもの顔で繁茂しております。強風をも氷雨をも軽くいなして、慌てる気配ひとつ見せません。たくましいもんです。憎たらしいほどで…

冬至を前に

桜の落葉は、どうやら山を越した。梢周辺には残り葉一枚もない。下枝に散り残しが視られる程度だ。 日昼は穏やかな陽射しに恵まれても、陽が落ちるととたんに冷えこみが身に沁みる。西高東低の冬型気圧配置だとかで、日本海側は雪もよいだという。もう明後二…

調理完了報告

口での説明は簡単だ。が、口ではひと言で済んでも、かかる手間はなかなかだという場合もある。なんのこっちゃと申せば、里芋の煮っころがしのことだ。 まず皮剥きが容易でない。料亭料理のように、また御節料理のクワイのように、包丁で厚く剥いてしまえば早…

ジョーダン

普段着のモンペを着用のまま、マイケル・ジョーダン・モデルのスニーカーを履いて、ラッパーのライブに出かけたようなもんだ。 とびきり生きの好い文学雑誌が届いた。『江古田文学』114号だ。頭から尻尾まで「日本実存主義文学」大特集である。 世に云う「実…

路傍の紙

断捨離に先がけてまず、部屋内を歩き回れる状態にする第一歩。 わが家には開かずの扉がいくつかある。老朽化のせいでも鍵紛失のせいでもない。足元に本やガラクタが積上げられてあるからだ。たとえば階段上りはなの廊下から書庫へは、扉はあっても直接には入…

遅々として

● 十個ほどの食器が、一気に割れた。東日本大震災では、この十倍も割れたのだったろうから規模は比べものにならぬが、それ以来の大量損壊である。 食後の盆を洗い場に運ぶ。調理台と俎板には皮剥きを済ませた野菜類の水切りボウルが並んでいたため、盆を半分…

いただき納め

年末恒例の国家的文化行事と云ってしまえばそれまでだが、今年も多くのお心尽しをご恵贈いただいた。ものぐさゆえの欠礼がちとなりやすい持前の性格に加えて、老化によるウッカリが昨今絶えぬ身としては、自分に信がおけずに気が気でない思いだ。どなたに対…

繕いもの

繕いものの BGM はユーチューブ動画のカーリング試合中継にかぎる。試合展開がゆったりしているし、ヘッドホン越しに音声さえ聴いていれば、眼を離していてもおおよその場面は想像がつくからだ。異変が起きて重大局面が到来したら、ンッ、ナンダッテ、と画面…

生活の知恵?

メイカー品のレモンティーを愛飲しているわけではない。そこそこ気に入って、たまさか買ったさいのペットボトルを、保存活用しているまでのことだ。 紅茶は毎日飲む。といっても、紅茶愛飲家からは眉をひそめられるにちがいない野蛮な飲みかただ。鍋の水にテ…

エエかっこシー

この時期の雨が嫌いな理由。併せてアスファルトの進歩。 拙宅老桜樹の葉が、両隣の往来まで汚す。風向きによっては、向う三軒のご門前まで汚す。落葉掃きは責任義務だ。できれば毎日が望ましい。が、怠け心が生じる。この程度であればさしたるご迷惑というほ…

年越し籠城用糧秣

寄る辺なき独居自炊の身をお気遣いくださり、つね日ごろ無沙汰欠礼の限りを尽しているにもかかわらず、親戚ご一統から、わが年越し籠城への食糧支援が次つぎ贈られてくる。世界の戦闘地域住民には顔向けしづらいが、当方の人道支援はいたって豊富だ。 埼玉県…

身に残る

ナイスシュート! なるやならざるや。平均年齢七十歳超の選手たちによる、ゴール下の激しい攻防。ボールの行方には、だれもが責任取りかねる。 バスケットボール部 OB 有志による忘年試合だ。粋な世話役の計らいにより試合とは称ばれず「玉拾い大会」と命名…

空振り

久かたぶりにサカゼン池袋店へと出向く。Gパンを一本買いたくて。だがまたしても、私は浦島太郎だった。 サカゼン新宿店を利用し始めたのは、一九七五年ころだったろうか。場所は今と同じ新宿二丁目の本社ビル一階で、後年ゲイストリートとして有名になる一…

うたた今昔

長谷川 唯。Getty Images の写真を無断で切取っています。 今の「なでしこ」は強いと思う。 サッカーファンからは、今さらなにをと嗤われてしまうことだけれども、「なでしこ」と聴けば、澤 穂希や川澄奈穂美を想い浮べてしまう世代の年寄りゆえ、お許し願い…

さすらわない

♬ だれもが 物語 その一ペイジには 胸はずませて 入ってゆく ・・・・・・ 窓の外は雨 あの日と同じ(作詞/伊勢正三) 「ラジオ深夜便」がイルカ特集を流している。『雨の物語』は好きな唄ではあったが、カラオケで唄ったことはない。だのにラジオに合せて、…

朝採り

本日の収穫である。今年はこれ一個で仕舞いとなりそうだ。 拙宅敷地の南西角に、カリンの樹がひと株ある。二階の窓ほどの高さに育っている。桜の老大樹の隣に寄添うように立っている。根かたには万両の低木がひと株、うずくまってある。 昨年は高いところに…

一歩あり

囲碁・将棋といった習い事は、だれから教わってもいい。どう教わってもいい。教わるからには、ただひたすら熱心でなければならない。熱心さが足りなければ、一生ヘボで了る。身に浸みて自覚している。 政財界人や富裕層や大新聞社がこぞって、日本棋院や日本…

玉子記念日〈お礼〉

「これもそれもありがたいね」と思うから師走四日は玉子記念日 停滞日記である。消滅せぬかわりに発展もしない。限られた読者さまや知友に向けて、取るにも足らぬ平々凡々の日常を、わが生存確認のごとくに投稿し続けてきた。 登録読者さまの数は、二年半か…

吹きだまり

落葉を掃き集めただけのことである。 桜樹の葉が散り始めた。花梨はまだ散り始めない。年越しまでに桜は落葉の山を越える。花梨は年を跨いで散り続ける。 往来を汚す。ただし道幅いっぱいに落葉が散らばるというほどでは、まだない。私一個の料簡では、惨め…

先達批評家たち

影響? 受けたに決ってる。どんな影響? 憶えてなんぞいるもんか。 はっきりと記憶され、その後おりに触れて思い返される深刻な影響というものがある。「出逢い」なんぞと表現される場合も多い。 それとは異なる影響もある。そうだったのかなるほどね、とい…