一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

まずその十倍

昨夜、台所をしながら漫然とラジオを聴いていて、驚かされた。もうゴールデンウィークに入っていたんだってさ。 かつては天皇誕生日と云っていたと思い出した。昭和天皇が崩御されて、昭和の日と称ばれるようになってからは、なんとはなしに二軍の祝日といっ…

ある事情があって

一木ビフォー。 今日も日和に恵まれた。残念ながらあまりに風が強い。加えてとある事情もあって、土いじりには向かない。拙宅の玄関番ネズミモチの剪定をする。 毎年この季節には同工異曲の日記となるが、同じことを考え行動しているのだからしかたがない。…

たしか去年も

ひと坪ビフォー。 昨年の今日の日記の題は「ひと坪」となっていて、ドクダミとヤブガラシを引っこ抜いた噺となっている。本日と同じく、気持ちの好い日和だったのだろう。 例により、無理は禁物。筋肉痛そのほかで、引続きのヤル気が途絶えてしまっては大ご…

やり甲斐

小雨もよいの肌寒さすら感じた昨日からは一転、雲を探すほどの好天となった。金剛院さま墓地へと月詣りである。 母命日は六日、父命日は別月の二十六日。いつしか墓参りは六の日、という習慣になった。昨日が父の月命日だったが、ふらっと出掛ける気になれる…

過渡期

ニューヨーク州で立候補し当選した共和党所属の連邦下院議員は、かつて有名大学を卒業後、大手金融機関に勤務した。祖父母はナチスドイツの迫害を命からがら逃れた人で、母は同時多発テロの被害に遭ったという。動物愛護団体を設立して、数千匹の犬や猫の命…

ぴよこチャンネル

「piyoko の韓国 Lab.」というユーチューブチャネルを視聴している。韓国人アラサー美女が韓国の繁華街を食べ歩き案内する動画と、日本各地の体当り旅行で観光しつつ食べ歩きする動画とが四割づつ。その他の随筆的語りが二割といった、バランス良き日韓親睦…

意思表示

統一地方選挙の結果が判明したようである。感想なんぞ、ましてや所見など述べる分際ではない。ただ、私は投票行動を誤ったかもしれない。 わが町ではいつの選挙でも投票所となる区立小学校へと、正午少し過ぎに出向く。朝早くに赴きたかったが、これでも起床…

ヒヨドリ〈追悼〉

地下鉄「千石」駅から地上へ出て、東洋大学正門方向へと歩く。いったんだらだらと下り、東洋大学を過ぎるあたりからはかなり急な上りで、白山上へと上り詰める。旧白山通りだ。下りはじめてほどなくのところに、その中華料理店はあった。 中学・高校時代のバ…

施す

東京都からのダイレクトメールを受取った。諸物価急騰の影響を受けやすい都民に、食糧を施す施策だという。はっきり云ってくれても構いませんよ。「収入の乏しい気の毒な人」と。 「おこめクーポン事業」というそうだ。九種類のコースから希望を選択し、同封…

新天地

いつまで迷っていても、埒が明かない。汚れものは溜まるばかりだ。初入店のコインランドリーへ。 二方向へ出入口を開いた角店である。しかも狭い店だ。洗い上りや干し上りをぼんやり馬鹿面で待っていようものなら、道行く人から丸見えだ。しかし二十四時間営…

柄合せ

両口屋是清「ささらがた」 端午の節句を目途とした、季節限定の菓子だ。 漢字では「細形(ささらがた)」だろうか。布地の細かい織柄のことである。江戸小紋などがこれにあたろうか。それを菓子の商品名に援用するのは、職人の行届いた工夫と手わざ、といっ…

解釈

中森明菜『歌姫ベスト』 カヴァー曲のベストセレクション CD の一枚。台所作業のわが愛用 BGM である。 中森明菜の声が好きだ。しかも収録曲が私でも知る曲ばかりなので耳に心地好い。 ということはオリジナル版の歌手なり作詞作曲者が、明菜さんよりもだい…

長石

パンと洋菓子の老舗永楽堂が閉店したのは、昨年七月のことだった。 跡地は歯科医院となっている。今風にデンタル・クリニックとやらに。 幅二十センチほどのコンクリート造作物が隣接ビルとの境界になっている。無理すれば跨げぬでもない膝丈ほどの高さだか…

去年今年

長年利用し続けたコインランドリーが閉店した。平行した一本向うのサミット通りにもランドリーがあったので、サンタクロースよろしく巨きな洗濯物袋を肩にして、脚を延ばした。そちらにも同一の貼紙が出て閉店していた。同じ経営者だったのか。迂闊にも知ら…

撮り妓

「はんなり」さんユーチューブ動画チャンネルよりいただきました。 撮り妓(とりこ):まだ辞書に登録されてないと思います。私の造語です。むろん「撮り鉄」からの借用です。遺憾ながら月並な着想ですから、どこかでどなたかが、すでに使っておられる語だと…

よくある、だって?

「それって、アルアルだよね」 いつごろからか聴かれるようになった、俗語的口語表現である。具体的説明を圧縮してニュアンスだけ通じさせてしまう便利な語法で、私も使ったことがある。が、今もって好きな日本語とは申しがたい。 ご多分に漏れず、一部の職…

ただ歩く

「ご来日おめでとう。なん年ぶりになるかしらん?」 「帰国だよ。身内に慶事があって、一週間ほどね。十四年ぶりになるかな」 「そりゃもうドイツ人でしょう。永住権も申請できるだろうに。やはりご来日だ」 学生サークル古本屋研究会の立上げメンバーによる…

太郎

太郎。 数日前に、太郎が停まった。電池交換の時期だ。前回交換時も書き留めた憶えがあるので、日記を溯ってみた。2021年11月13日の記述だった。一年と五か月ぶりの交換だ。 太郎との浅からぬ因縁や、太郎がいかに歴戦の勇者であるかについては、すでに書い…

古戦場

日記はまだ日曜の午後でウロウロしている。古本屋巡りという点では、訪問先が減ってしまった高円寺を切上げて、荻窪へと移動する。 荻窪駅南口には老舗もしくは有力店と称んでいい有力三古書店さんが健在だ。同行の若者たちに、古本屋を散策した気分になって…

よその春

高円寺駅前の植込みでは、白花ツツジのつぼみがいっせいに自己主張。油断してると咲いてしまうぞと、人間をどやしつけているかのような勢いだ。街路樹のハナミヅキも、開花し始めている。いずれもわが町より早い。 西部古書会館があるから、かつて高円寺駅に…

参加唄

中島みゆきのアルバム『 I Love You 答えてくれ』を作業 BGM に流してなん日か経ったが、もっとも回数多くリピートしたのは『背広の下のロックンロール』だ。 楽曲も声色も個性強烈にして、聴くものだれもがすぐに判別できる中島節とはいえ、曲色というか唄…

別勘定

エル・グレコ(1541 - 1614)、『受胎告知』(部分) 倉敷の大原美術館へ入って、最初の部屋である一階大広間の右端の壁に陳列された、展示番号一番の画である。(今は知らない。四十年も前に訪れたさいの記憶だ。) 天使来臨して、聖処女マリアに奇跡の受胎…

ふつつかですが

考古学では形式を問題にするが、歴史学では様式を問う。学生時代に、東洋美術史・文様史の教授から教わった。 鳥インフルエンザの影響で、ビッグエーで玉子が買えない。棚にはお詫びの札が立てられてある。サミットストアまで足を延せば、商品はある。が、眼…

貧乏性

とくにコレクターというわけではないのだけれども。 靴下を通して足の裏になにか当る。周囲にも足元にも物が積上げられて、すっかり窮屈になっているデスク下へと、苦労して身を潜らせて摘みあげてみたら、樹脂製の黒いブラシだった。昆虫の頭のように先が湾…

足で稼ぐ

新学年となって、学生サークルも新執行部による新入会員勧誘活動が始まる。 新入生歓迎行事なる催しがある。学生は春祭(はるさい)と称んでいる。秋に開催される大学祭のミニチュア版との位置づけだ。音楽・演劇系の専攻グループやサークルによるパフォーマ…

雨はどこから

歳月を経ても、この人の唄の力が衰えないのは、詩の力のゆえだと思っている。 炊事だの洗い物だの、台所作業の BGM としては、古めのモダンジャズを繰返し流しっぱなしにしてある。ゴキゲンで解りやすい音、コールマン・ホウキンズ、ドナルド・バード、ウェ…

仁と義

とある日の、ビッグエーでのレジカウンターにて。 私はすでに勘定を済ませて、荷改めの長机でカゴから買物袋への移し作業をしていた。レジカウンターから男の大声が聞えてきた。私の次の次に行列していた老人らしい。老人といっても、私よりはいくぶん若そう…

スッチー

なんだ、そんなことも知らねえのか。時流に添うことを諦めた年寄りってのは、始末に負えねえもんだなあ。……解ってらいっ!「ホームページからお入りください。右上に紫色の「どうぞ」のバナーがありますから、クリックしていただきますと、フォーマットが開…

葉桜挨拶〈口上〉

―― 口 上 ―― かたじけなくもありがたくも、またも読者さまがたにナマの言葉にてご挨拶申しあげます次第となりましてございます。 当「一朴洞日記」は本日このご挨拶をもちまして、立上げより連続七百日めの投稿と、あいなりましてございます。これもひとえに…

倉敷

節約を尽しながらもぜいたくな旅。気ままな遠出なんぞは、これが最後かもしれない。そうだ倉敷へ行ってみようと思い立ち、愉しみに計画したのだった。 食糧買出し以外には、極力外出しない方針だ。用件ひとつを足すために池袋まで出掛けたりはしない。百貨店…