一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

決りごと

左から、ベーコンチーズ、メンチカツパン、ツナサラダパン。ベーカリー・ハラダ謹製。月例の験かつぎだ。 「仕事」と称べるものは、月に二度か三度しかない。うち金額の多寡にかかわらずギャラを頂戴する仕事となると、年に十回内外だろう。「使命」「役割」…

棘と根と

建屋の北側、児童公園との境界。拙宅草むしりの難所のひとつである。 むさ苦しく繁茂するまえに、こまめに整備しておくべきだ。さようとは承知。さりながら身はひとつにして時は足らず、つい視逃してというのは嘘で、視たくないものは観ずに過してきたのだ。…

立入禁止

園児の良い子たち、ごめんね。今日はお昼ご飯まで、児童公園は立入禁止になりま~す。先生がたと、室内で遊んでくださ~い。 重いものや巨きいものを吊上げたり、移動したりできる、頑丈そうなアームを搭載したクレーン車と、刈り取ったものを圧縮して詰込ん…

怪傑村木さん

卓抜な作戦も、遂行者の力量によっては、功を奏さぬ場合もある。 村木さんという、とんでもなく魅力的はお婆ちゃんが、ご近所にいらっしゃった。半世紀も前のことである。独りで間借り暮しされ、そこで和裁教室をなさっていた。教室といっても、村木さんを慕…

気づいてみれば

君子蘭を株分けして地植えにしたさい、その根周りに、土の応援になればと枯草や生ゴミを埋めておいたところ、生ゴミに混じっていたカボチャの種が芽吹いてしまった。その出足は怖ろしく早かった。周囲は除草したばかりで土面が露わだったから、君子蘭の根か…

女の郷里

ご恩を受けた姐さんに、お眼にかけるも面目ねえが、これがしがねえ駒形の、一本刀ぁ、土俵入りでござんすぅ。 長谷川伸を象徴する傑作は『瞼の母』だろうが、私は第二の代表作『一本刀土俵入』が好きだ。 水戸街道は取手宿(茨城県)、つい眼と鼻の利根の渡…

世が世であれば

違う場所で出逢っていれば、むしろ愛しさすら覚える連中だ。 往来に面した駐車スペースやブロック塀との境界上に、雑草が増えた。丈のあるのがネコジャラシ(エノコログサ)、地を這うように根かたを埋めるのがごくごく小型の三つ葉類だ。春の草むしりでいっ…

富士登山

撮影:丹沢和仁 コロナ禍は明けた。季節も日和も好し。山梨でも静岡でも、ドッと押寄せた富士登山客で大賑いだという。 商業施設・サービス施設にあっては、いささか愁眉を開いたことだろう。だが、過ぎたるはなんとやらで、痛し痒しの問題が生じているとい…

夏の酒

とくに銘柄にこだわる派ではない。酒ならナンデモイイ派である。だからといって、美味いかそれほどでもないかを利き分けていないわけじゃない。 酒を進物とする場合のみ利用する百貨店の酒類コーナーがある。別に相談できる酒屋も一軒ある。蔵元による触込み…

労作

その場では、なにげなく礼を申し、なにげなくディスクの配布を受けたのだったが、帰宅してから開いて中身を読み、落着いて考えてみると、たいした労作だ。 他界した学友の遺稿集をまとめようという企画があって、その第一弾が、数名の骨折り人すなわち仲間交…

米の顔

中国相手の商売を思い悩んで、アメリカの顔色を窺ってるわけではございません。文字どおり、お米の顔色のことでございます。 このところ外食の機会が続いたり、炊事を手抜きしようと素麺を茹でたりパンを買って食べたり、酒肴にて胡麻化してしまったりで、米…

軍曹殿

まず地ならしに牛乳がまいります、軍曹殿。一両日不規則が続いて、定常に復するに間が空きましたが、本日はご安心を。隊内の安定を維持すべく、目立たぬ微量要素も漏れなく配備いたしました。 喉を通過して食道を下りきった、ちょうど胃袋の入口あたりでは、…

つはものどもが

高校生時分の仲間たち七人が寄っての梅雨祓い。心安い店のふたテーブルを拝借して、思いおもいの飲食料を持寄る形式での飲み会だ。 ご店主が先ごろ巨きな治療からご退院なさったばかりで、まだ本調子でない。にもかかわらずビールと刺身大皿と乾きものとをご…

線香臭い、きな臭い

気にかかっていた用件を果して、喫茶店でひと息。わが超些細暮しにあっては、至福の瞬間だ。これほど他愛のない至福なんぞ、あってよろしいもんだろうか。 昨日は池袋まで出掛けて、節季ご挨拶の手配完了。朝食前だったので、足早に帰宅のつもりだった。が、…

弾圧防衛

池袋駅東口からロータリーを越えた向うへ行くには、中洲のはさんで信号つき横断歩道を二度渡ることになる。中洲には地下道への下り階段が口を開けているが、合金とアクリルの塀に囲われた喫煙所も設置されてある。時局にそぐわぬ悪癖をもつ私にとっては、た…

塊と詰合せ

鉄道に乗ったのはいつ以来だろうか。パスモを使う機会もなかった。 空模様が悪かったり、気分が進まなかったり体調が整わなかったりして、鉄道に乗ってまでの外出をしなかった。気は焦るばかりだ。百貨店催事場の中元発送申込みカウンターで、早期申込み割引…

もう喋りません

宮田 輝(1921 - 1990) 喋ることを真剣に研究した覚えはないけれども、時代と身の上に合せて、喋りかたをいささか工夫してきたとの想いはある。 五十歳ころのある年に、二人の美少女歌手が同時に登場してきた。浜崎あゆみさんと宇多田ヒカルさんだ。かくも…

ごく粗雑に

ようやくの晴天だ。前回の草むしりからさほどの日数が経過したわけでもないのに、草ぐさのはびこりは眼を視張るばかりだ。ご来訪者を待つ時間が少々あったので、ごく粗雑に草むしりした。 サムイル・マルシャークの児童劇用戯曲『森は生きている』にこんな場…

梅雨見舞

自分への梅雨見舞い、と思い立った。 本降りでもないが、晴れるでもなく曇りですらない。かといって、いかにも梅雨期間中というようなジットリ蒸暑さもない。むしろ肌寒くすらある。 仕事メールや知友からの重要メールはありえようもなく、迷惑メールは毎日…

打楽器

わが家にあって現役で活躍している唯一の楽器。ウィンドチャイムという。れっきとした打楽器である。 幼稚園児だった時分に、園で保有していた玩具としての楽器として、カスタネットやタンバリンと並んで、トライアングルがあった。一か所だけ隙間が空いた、…

疾風のごとく

篠崎澪『努力夢元』(ベースボール・マガジン社、2023.5) 二人の姉がミニバスのクラブに所属していた。次姉が試合で大喝采を受けるのを観て三女は、私もやると云い出した。小学一年生だった。 負けず嫌い、禁欲的努力家、練習熱心、筋トレの鬼女……富士通レ…

立寄り所

彼には、パソコン画面が眩しくはないのだろうか。 起床するとまず洗面所へ行って、置きっぱなしにしてある体重計に全裸で乗る。半分身繕いして、検温と血圧測定する。数値をメモに記入する。「日録」との表紙を着けたノートに転記するのは、ある程度まとまっ…

同月同日

少し異なりますが、まあ同じです。 当「はてなブログ」には、参考までに昨年・一昨年の同月同日の日記は、というバナーが設定されていて、日ごろはさして興味もないのだが、つい気紛れにクリックしてしまった。 一昨年の今日は、ユーチューブ動画上の音声に…

寝そびれ散歩

この齢になってもまだ、アヤメ、ハナショウブ、カキツバタ、つまりアイリス系の花形の観分けができない。困ったものだ。 また寝そびれちまった。深夜に一度眠気が差したのだったが、ちょうど昔の映画を観ていたから、最後まで観てから寝ようと思い、そこがユ…

男爵芋

目下私は芋大臣。見境もなく、ふんだんにじゃが芋が食える。幸せな気分である。 健康管理には、日に二度の食事の第一食をチャント飯、第二食をテキトー飯とするのがよいと、勝手に考えている。が、なかなか考えどおりにゆかぬ日も多い。就寝起床が不規則なう…

タイム・シャッフル

拙宅より徒歩一分圏内にあって、わが日常的用足し所だったファミマが、閉店した。この日記にも当りまえのごとくに、しばしば登場した店である。 弁当やおにぎり、総菜パンや菓子などの食品。緊急間に合せの文房具や小物雑貨。半年に一度の『文藝春秋』などを…

約束

いかにもそれらしい人間となるためだけに、十年もの歳月を費やすのは、愚かなことだろうか。 若い時分に、信頼する先輩から云われたものだ。良い作品を書くことが大切なのはもとよりだが、作家らしい人間になることが、同じくらい肝心だと。 私は小説家たら…

どてかぼちゃ

トゥビー・オア・ノットゥビー! この春、老齢の君子蘭を分散移封した。古い鉢に窮屈そうに縮こまっていたものや、欠け鉢から溢れ出して、成行きでそこいらに根付いたりしていた連中を、いっせいに解放。古根を払落して根分け株分けし、病葉を切落してひと株…

贈り物

スタインベック『赤い小馬』(西川正身 訳、新潮文庫) 長篇『怒りの葡萄』『エデンの東』を読みとおす忍耐力も体力も、もはや残ってはいまい。スタインベックを思い出したければ、連作短篇集『赤い小馬』Red Pony に限る。長篇に勝るとも劣らぬ傑作だ。カリ…

健康食

またも学友大北君から、ご丹精の収穫物を頂戴した。感謝々々しきりだ。 過日、のらぼう菜(菜の花に似る)と春菊と絹さやと菜付きの蕪とをいただいたばかりだ。春菊は一度胡麻和えに、絹さやは一度椀種にしたが、両方ともほとんどは天ぷらに揚げて豪勢にいた…