一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

習う

 緊急ナントカで先行き不透明だけれども、近ぢか読書会に参加する予定が入っている。何十年ぶりだろうか。
 ごくお若い元教え子さんらが、読書会を立上げると耳にして、末席に混ぜてもらえないかと願い出て、許されたのだ。おそらく私の知っている本などは読まないのだろう。貴重な機会である。

 米長邦雄さんは五十歳で名人位に就いた(最年長記録)。指し盛りを過ぎた年齢から二段ロケットに火が点いたように、もう一歩強くなった秘訣を問われて、羽生善晴たちから将棋を教わっているからと答えた。羽生善治さんといえばその頃、ちょうどただ今の藤井聡太さんのように、眼にも眩しい登り龍だった。
 棋士はしばしば自主的な研究会に集うが、米長家の道場でも定期的に研究会が催され、羽生さんはじめ定連の若手らが切磋琢磨の時を過していたという。米長さんは若手の研究に虚心に耳を傾け、先入見を破っていったのだろう。長年の戦歴による経験の智は佳しとして、気付かぬ間に溜っていた垢や錆を、削ぎ落し、磨いたのであったろう。

 ただし私には、名人位を狙うがごとき野心はないけれども。