一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

そこじゃなくて

 佃警警部補シリーズで西郷輝彦さんを観るのは愉しい。スマートで、笑顔が無邪気で。オンエアがさて何年前だったか、まったく記憶にないし、同時代に観ていたはずなのに内容もきれいさっぱり忘れているから、毎回愉しめるわけである。
 なかに「望郷」という神回がある。出演陣は伊東ゆかり中尾ミエ布施明。それに参事官というお偉いさん役で、橋幸夫が友情出演している。ザ・ヒットパレード世代にとっては、まさに望郷的なこしらえだ。役どころと事件概要は、ここでは伏せておこう。

 直接にお眼にかかったこともない、往年のスターたちだが、お元気でしかもきれいでいらっしゃる姿を視るのは、嬉しい。

 橋幸夫さんは、拙宅近所の城西高校ご出身だ。現在の城西大学附属高校だが、当時まだ城西大学は創立されていなかったから、金網を越えて校庭を遊び場にしていた近所の悪ガキから申せば、城西高校附属大学と申しあげるのが順序というものだ。
 その時代の私立高校はおしなべてそういうものだったろうが、城西高校もそれまで、入学に骨折るほどのこともなかった。だが橋さんがデビューした翌年から、かなり激戦の入学試験を突破しなければならなくなったとの噂があった。
 ただ今では、甲子園にも出場したいわば有名校で、たしか広島カープの名選手・高橋慶彦さんもご出身のはずである。

 噺はそこじゃなくて、今でも伊東ゆかりさんを好く云わない奴とは、本音を申せば同席したくない。