一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

じつは

 銭形平次といえばガラッ八、佃警部補といえば早田刑事。演じるは六平直政
 六平さんは武蔵野美術大学それも彫刻科大学院のご出身で、劇団状況劇場では道具方を一手に引受けた、たいそう腕達者な物造りだそうな。
 観た人から一度で記憶されそうな、個性豊かな容貌と声、それに全身から発せられる形容しがたいエネルギーで、テレビドラマになくてはならぬ性格俳優だ。

 その六平さんがご自身のラジオ番組で、対談相手のゲストが内藤剛志さんだったときの回。
――二枚目ってのはさぁ、主役しかできねえだろ。あちこち出るわけにはいかねえよ。二時間ドラマ花盛りなんていったってさぁ、じつは俺や剛志みてえのが支えてんのよ。そう思うだろ、なぁ剛志。

 ごもっともな噺である。いや、テレビドラマのことも演劇界のことも知らない。自分の分野に置換えてみて、同感だ。