一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

趣味

 石坂浩二さんがブロードウェイでミュージカルをご覧になったときのこと。プログラムの出演者プロフィール表で、ある女優さんの趣味欄にnose-pickingとあったので、なんのことかと調べてみたら、鼻くそをほじくることだったという。つねに鼻孔を清潔に、スカスカにしておくことが、彼女のこだわりであり、自分自身に満足がゆくことだったのだろう。
 これはたしかに趣味と云えると、私も深く納得した。同じトークで石坂さんは「読書が趣味、プラモデルが趣味と云われてもねぇ」ともおっしゃった。無類の読書家にして、著名なプラモデル愛好家として知られる石坂さんにしてである。

 お説はしごくごもっともで、好きな余暇の過しかたといっても、それが仕事に繋がったり、生きかたの一部であったりすることを、趣味と称するのは、いかがなものかしらん。端的に申して、世に氾濫する、趣味読書、趣味映画鑑賞……ありゃいったい何だい、と思っているのである。

 目下の私の趣味は、拙宅のゴミの密度を高めることである。週二回の家庭ゴミの回収日に、無駄なくずしりと詰ったゴミ袋を拙宅前に出すことである。いや密度を高めることで、週一にも、場合によっては隔週にすることすらできる。
 しかしながら、ゴミについては、申したき件があまりにたくさんあって、長くなりそうなので、いったんここまで。