一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

ぜいたく

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 自民党総裁選とその後。新聞もテレビも、さぞ賑やかなことだろう。こういう時は、いつも以上に報道を眼にしないように心掛けている。日が経ってから、まとめて多角的に観る。俗説に振回されると、大局を誤る。だいいち、私ごときが、政治に敏感であることなど、誰も望んじゃいない。

 父母の看病と在宅介護を、仕事より優先させた時期が、およそ十年あった。福祉にも医療にも、それはそれはお世話になった。政治の動向も、見逃せなかった。
 遅かれ早かれ自分も、諸方にご迷惑をおかけすることになるのだろう。今は端境期というか、つかの間の小春日和とでもいうか、幸いにして平穏な時期だ。
 こんな時期の老人が、政治情勢に敏感だなんて、かえって現役世代にご迷惑だ。

 本日の買物はというと――
(八百屋)人参3本袋150円、胡瓜3本袋100円。
(スーパー)玉子10個パック、油揚2枚袋、竹輪小6本袋、ウィンナソーセージ得用30個袋、ちっちゃいシュガー・クロワッサン4個袋、かりんと風アンドーナツ4個袋(期限近くにつき半額)、一番搾り350ミリ2缶。〆て、1,207円。
ダイソー)単3乾電池6個パック110円。
(ファミマ)煙草2箱40本で1.000円――今日から値上げ!

 おかしくないか? 煙草二箱で、人参が二十本買える。胡瓜なら三十本。貧民老人には、煙草など贅沢品というわけだろう。
 かといって、今さら禁煙してもねぇ。呼吸器疾患や癌治療で闘病中であれば、明らかに煙草は有害らしいが、発病予防という点では、今やめたところで手遅れだとの説も、耳にした。
 しかしとにかく、煙草は議論もなくちょくちょく値上げされる。増税しても文句の出ないところからは、容赦なく搾り上げろということなのだろう。

 ご時世でしょうから、はい、反抗はいたしません。けれどひとつだけ、かねがねお願い申しあげていることがあります。
 かつては専売公社と申しますお国の機関におかれまして、煙草の生産から販売権までを、一元的に管理しておられました。煙草農家がズル(闇ルートへの横流し)しないように、お役人が畑までやって来られて、葉っぱの枚数までチェックしてゆかれましたっけ。
 そして煙草による収益のほとんどは、税金として国庫に上納され、近代国家日本の建設に充当されると、国民は教えられて参りました。

 その後、研究が進んで、煙草は健康に有害だとされ、あまつさえ、マナー違反の喫煙者が絶えぬのにつけこんで、喫煙者=犯罪者であるかのごとき扱いとなりました。
 それもご時世。申しましたとおり、反抗はいたしません。ですがね、帳尻だけは、はっきりさせていただけませんか。それが仁義ってもんでございましょう。

 専売公社時代からの収支明細が、残っていないとは云わせない。
 当時から、もしや煙草は健康に有害ではないかと、薄うす疑ってはおりました。けれど丸儲けの税収源を手放すわけにはゆかず、視て視ぬふりをしておりましたと、はっきり明言して欲しい。
 そして国民の皆様が、有害煙草をバンバンお喫いくださいましたおかげさまをもちまして、あの国道とあの鉄道が開通いたし、あの護岸工事とあの橋が完成いたしましたと、帳尻をはっきりさせてもらいたい。
 嗜好品を犯罪扱いするのは、その後だ。

 さて、いちおう今日も買ってはみたがこの煙草、どうしたものか。私の生活水準にはふさわしくない、贅沢品なんだが。
 また今日から、酒場が開くという。こちらも、暮しに不可欠なものとして、これまで生きてきたんだが、さてどうしたもんだか。