一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

えっ

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 私の好物。お好み羊かん、煉り・小倉・塩・抹茶各二個、栗一個の、一袋計九個入りで266円(税込み)。愛知県豊橋市の杉田屋製菓さん製造。
 えっ、羊かんなら、とらやさんだろうって? さぁて聴いたことねえなぁ。

 ――最近になって、手記や資料が出てきましてねえ。祖父母たちの自決にいたる模様が判ってきました。

 拙宅に新聞を届けてくださる、そして集金に寄ってくださる初田さんは、沖縄県のご出身。私にとっては大学の先輩にあたる。アマチュア翻訳家として、地味なロシア文学に長年取組まれ、かのソルジェニツィンに比肩しうる存在ながら日本に紹介されたことのない、ソ連時代の地下作家の大長篇小説を訳し上げ、先年刊行された。むろん本邦初訳である。

 壕に手榴弾を投じたのは、十九歳の少年だったという。お祖母さんは「髪を直すからちょっと待って」と云ったが、英語の怒号が迫ってきたため、少年は信管を抜いてしまった。そこで急に怖くなって、無意識に壕から飛出してしまった。片目を失ったが、生残ってしまった。むろん壕の中の人たちは、全員死んだ。
 消息を知る村民たちは、生涯その件を口にしなかった。初田さんでさえ、お父上や年長の親戚から、たゞのひと言も聞かされたことはなかったという。死ぬも地獄、生るも地獄の、沖縄戦後七十六年。
 初田さんは今も、末端の活動家として、ポスターを貼って歩かれ、新聞代金を集金して歩かれる。自転車をこぐ足つきも、かつてのようではない。
 ――ようやくですよ。祖父の手記が出てきました。

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 私の好物。鈴カステラ、一袋102グラムで108円(税込み)。岐阜県羽島郡のローヤル製菓さん製造。ファミリーマートとの共同開発商品。
 えっ、カステラなら福砂屋さんだろうって? 聴かねえ店だなぁ。