一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

責任

f:id:westgoing:20220226231350j:plain

 毎月末近くなると、ユーチュ-ブの収録日がやって来る。ディレクター氏が、機材持参で、拙宅へご来訪くださる。私はご指示のまゝに、喋るだけである。

 生産性向上をめざして、さっさと収録すればよろしいようなものだが、私は生来、原稿を書き始めるまえに、鉛筆を削り直したり、今日はどの消しゴムにしようかと思案したりして、なかなか取り掛らぬほうだ。
 機械の設営が完了しても、ディレクター氏との雑談をやめない。敬老精神の塊である氏は、根気よく付合ってくださる。

 そうだ、いつも予定時間を大幅に超過するので、疲労もするし、小腹が空きもする。お詫び代りに、せめてこれくらいはと、間食を用意していたのだった。
 で、本日の間食のご披露目。ならびに買物時のエピソードなど、最新話題に花が咲いてしまう。収録は、また遅れる。

 毎月遅れるのも申しわけないので、さっさと始めようと、殊勝な気を起す。ところで、と彼から提案。先月収録から今日までの間に、チャンネル登録者数が、百人を突破しましたとのこと、私はまったく気付かなかった。申しわけない気になった。
 今回のお喋り冒頭で、その歓びとお礼を視聴者のかたがたに申し述べるようにとの、ご指示である。さて、いかに申しあげたものやら……。お礼の気持は溢れんばかりにある。が、歓びはとなると、正直どう申したらよいのか、見当がつかない。
 ま、とにかく口にしてみる。真意がこもった心からの歓びとは、伝わらなかった気もする。お礼の気持はあるのだが、

 ようやく乗り始めたところへ、表を消防車と救急車が通ってゆく。収録ストップ。どのあたりから録りなおそうかと、相談になる。
 チャンネル開始したばかりの頃は、そうとう神経質にチェックしたものだったが、お互い馴れっこになってきて、だいたいこのへんまで遡れば好いんじゃないのと、見当付けるのも早くなった。
 編集段階で処理してくれている彼のほうでは、さぞやたいへんなお手間なのだろうが、どういうご苦労なのか、私にはさっぱり判らない。

f:id:westgoing:20220226234628j:plain

 なにはともあれ、喋り了えた。私は一段落。が、ディレクター氏にはまだ仕事が残っている。収録部分を検分チェックしてから、機材を片づける。やおらカメラを取出し、本日言及した資料類を写真に収める。そんなもんまで必要あるまいと思われるものまで、念のためとかで、撮影してゆく。

 あゝ、今夜も奥さまには、あい済まぬことをした。ご亭主を、こんな時間まで、お引止めするつもりではなかったのに。
 例月の問題点が改善の方向に向わないのは、私に自覚が足りないからに違いない。
 奥さま、申しわけございません。長引かせているのは、私です。けっして、ご亭主さまがお話し好きだからでは、ごさいません。本当ですよ。私の責任なんですから。