一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

不発

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 危ない! もう咲きそうだっ。f:id:westgoing:20220314135026j:plain

 そりゃあ、あんまりにもベタな春ってもんで……。

 昨夜から今朝もまた夜型読書。眼の奥がかるく痛むような、かすかにたかぶって眠りたくないような、気分・体調ともに半端な、陽気の好い午前。
 安眠するにはかるい運動か、とばかりに靴を履く。切り石すませて視あげればビックリ。桜のツボミが、昨日とは全然ちがう。今年の拙宅の花だよりは遅いと、たかを括っていたのはつい一昨日。一夜ごとに、ドタドタと獰猛な足音をたてゝ春が殺到してくる感じがする。

 昨日とはコースを替えて、その名もズバリ「フラワー公園」。樹木・下草・花壇と、植栽の多彩さを売りとする児童公園だ。「児童」目途だから、球技・自転車乗り入れ・煙草は厳禁だ。モニュメントとして一画に常設展示された地下鉄車輛には、自由に乗り降りできる。
 花壇には、あまりにベタな黄色い春。増田明美さんのマラソン解説じゃあるまいし、いくらなんでも説明過多でしょう、と思いきや、通りかゝった若ママと五歳ほどの女の子。
 「この花、なんの花?」
 「んゝ、菜の花」
 「ねぇ、この花、なんの花?」
 「菜の花ってば」
 「ねぇ、この花……」
 いつまでもやってる。お互い承知の微笑ましい馴合い。幸せなんだろうなぁ。

 吉野山こぞのしをりの道かへてまだ見ぬかたの花をたづねむ
 ご近所をチマチマ歩くだけではあるが、昨日とは別の道を歩きたい。

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 本日は再生資源ゴミの回収日。道端には、数十メートルおきに色別コンテナが置かれてある。大量のペットボトルや食品トレーが山をなしている。
 このマンションだけで、これだけの食糧・飲料を消費したんだ。豊かになったなぁ、などと想うのは、わが貧乏性のゆえか。
 こゝは昔、松月堂パン屋さんだった。よくコッペパンを買った。お金を足して、マーガリンかジャムを塗ってもらえた日は、嬉しかった。
 そのお隣は、稲毛屋精肉店さんだった。母に云いつけられて、ひき肉やコロッケを買いに来た。お客さんがある日は、メンチカツだった。
 今また、戦争してる国があるんだよなぁ。耄碌ゆえの感傷だろうか。

 そうだ、ついでに買物をと思い立つ。めっきり忘れっぽくなったので、必要なものが生じると、すぐさまマッチ箱ほどの小さなメモ用紙に記入して、煙草の箱のフィルムの内側に挟んでおくことにしている。昨日の買物以降にも、気付いたものがいくつかあった。ビッグエーに寄って帰ろう。

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 買物から帰宅したらお決りの手順で、居間に置くもの、冷蔵庫に収めるもの、階上の台所へ運ぶものに仕分ける。
 なんと、台所のものしかないっ!
 これが、七十爺さんの買物だろうか。どう視ても専業主婦ではないか?

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 それで思い出した。フラワー公園の花壇の前で、しみじみ考えたのだった。
 どんな世界にも、気が早過ぎる奴もあれば、出遅れる奴もある。不発に終る花だってある。