一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

悪くない



 このあと、外出したいのである。こと改まって外出と申すは、乗物を利用して他駅まで買物にゆくという意味だ。で、炊事の時間が惜しい。ファミマで、三色そぼろ鶏龍田弁当を買った。

 わりに気に入っている弁当で、以前も撮影した記憶がある。
 ファミマ、サミット、ビッグエー、弁当を買う店は三か所だ。ほかに種類豊富な弁当専門店、韓国弁当店などがあるが、まだ利用した経験がない。
 既知の三軒それぞれに特色明瞭で、買い分けている。商品出来栄えと値段の兼合いということだ。安ければよろしいわけでもなく、豪華であれば、美味であれば、よろしいわけでもない。時と場合により、気分にもよる。

 なぜ炊事時間を惜しむかというと、訪問したい先が二件あって、手土産を誂えたいのだ。わが町ではない菓子舗まで出かけたいのである。訪問先のご事情を拝察して、手土産の菓子を、店も商品も心決めしてある。中元時期だし、ちょうどよろしいかとも思う。
 なぜ今日、訪問する気になったかと申せば、ひとつには昨日ランドリーで洗濯を済ませたので、今日はまだ洗い物が溜っていないからだ。今ひとつには、原稿の目処が立ったからだ。

 月末〆切の原稿注文をいたゞいていた。ライター稼業の現役時分から、〆切は堅いほうだった。今回もほゞ間に合せた。が、出来栄えは九分どおりといった状態だった。お約束は十枚だったが、書き了えてみたら少々長い。あと二百字か二百五十字ほど、詰めなければならない。
 そこまでもってくる過程で、すでにかなりの省略を利かせてあるので、さらに二百五十字刈込みは、けっこう骨が折れる。
 締切日の朝、編集部へメール。もう一息のところまで来ているからあと一両日との趣旨。証拠物件として、九分どおりの原稿を資料添付した。私の気性を呑込んでいる編集部であれば、そこまでする必要もないのだが、今回はご紹介くださったかたがあって、初めてお取引きする編集部なので、馬鹿丁寧に仁義を切った。
 返信。日程には多少の余裕があるので(そんなこと知ってらぁ)、週明け四日月曜に完成稿をメールして欲しいとの由。了解。
 で、昨日(というか本日払暁)、作業を了えた。頭を冷ましてから、通読点検のつもり。それが済めばメール送稿を残すのみだ。
 洗濯と原稿、いずれのプレッシャーもない今日が、外出・訪問の最適日というわけだ。
 

 それにしても、弁当を電子レンジで一分。即席味噌汁に湯を差すだけ。なんと楽な炊事であろうか。日常的にこんなことばかりしていては、不規則生活老人の体力が維持されるはずもあるまいが、本日は特別の手抜き。非日常の用件を、まとめて片づける日だ。気分は悪くない。
 ダイソーで百十円老眼鏡を買い足してきてある。拙宅内の小生立寄り所に配備すれば、咄嗟の不自由から解放され、いつでもどこでも読み書きできる。これも、気分悪くはない。