一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

いじけ抄





 本日は佳き日である。他愛のない日常。

 早朝であれ昼下りであれ、その日起床後たゞちにおこなうことは、検温、体重と血圧の測定、それらのメモだ。いく日ぶんかまとめて専用帳面に転記し、さらにそれが溜るとグラフを作成する……ことにしてある。クリップされたメモ用紙の束が厚くなってきている。測定はまめなのに、転記のほうがついつい怠けがちになるからだ。
 牛乳かカルピスかアイス珈琲か、たまたま冷蔵庫にあったものをマグカップに注いで、デスクに向い、パソコンを立上げる。来信メールを一覧し、迷惑メールや不要の情報メールを「ごみ箱」に捨てる。 SNS 上の来信もひととおり検分。緊急大事件などがあった場合には、案外時間を要する。歯磨き・洗顔が後回しになっている。

 自分のブログと YouTube に異変がないか改める。私の粗雑なお喋りを ko-h さんがまとめてくださってきた YouTube チャンネル「隠居夜咄」の、たゞ今現在視聴数が、11,111 回と出た。本日は佳き日である。
 チャンネル開設いらい一年三か月ものあいだ、ストップウォッチで測ったように週一ペースでアップロードしてきた新編集動画が、こゝひと月ばかり足踏みしている。この夏、ko-h さんが重なる災厄に見舞われてしまったからだ。

 第一は、ご夫妻同時に疫病感染してしまい、大変なご不便を余儀なくされた。ご本職にあっては学習塾の塾長である彼にとって、夏期講習の時期はそれでなくても繁忙期だ。書入れである。日程調整や人員手配ほか、さぞや往生されたことだろう。幸いご夫妻とも日ごろからすこぶる体質強健と見え、時日を経て後遺症もなくご本復なさった。
 第二の災厄は、長年ご愛用の編集用パソコンにとうとう寿命が来てしまい、装備一新の必要に迫られた。耐用年数をとうに超過している装備を、ご機嫌伺いながら騙しだまし使ってこられたそうだが、とうとうついに、にっちもさっちも……と苦笑された。
 これを機に、より汎用性の高いマックのシステムに換えられたそうだが、そうなると従来の編集ソフトのことごとくが流用できなくなり、かなり初期段階からの設定し直しにご苦労なさっているとのこと。夏期講習や新学期業務の合間々々に、ぶつ切れこま切れ時間を活用してチョコチョコッと、という作業ではないのだろう。ご丁寧に説明いたゞいても、私にはさっぱり見当がつかない。
 画像作成、ふ~む、要するに光と影との感光バランスでしょう? こちとらオートフォーカスのアパレルフォトの認識から一歩も出られない。

 さような事情で、開設いらい初めて、ひと月以上の新作アップ無しの事態を迎えているが、その間にもこの世のいずこかには、チャンネルを覗き観してくださるかたがおいでと見え、わずかづつ数字が動いてゆき、おかげさまで本日佳き日を迎えた。登録者数183名さま。むろんご登録などなさらずに、一回こっきりお耳にされて二度と聴く気になれんわと去って行ったかたが多いのだろうが、それでも備忘のために一応登録だけでもしておこうかとご判断くださったかたが、これだけおいでということだ。
 登録者数十万人を超えて、YouTube から「銀の盾」を賜るなどという有名人がたと較べると、なんとさゝやかにして目立たぬ活動であることか。
 ちなみに、わが「一朴洞日記」はご登録者150名さま。ちょうど一年前ころ最大152名という時期があり、気の迷いから醒められたかたが出て147名さまに減り、以後数か月にお一人くらい新規の出逢いをいたゞいて、ほとんど数字動かず150名さまである。とはいっても、日々のアクセス数は50からせいぜい70程度。なんらかの事情で180だの200だのに突出した日がいく日か、30台に凹んだ日もいく日かある。
 ほかに FaceBookTwitter 経由でのわが知友お立寄りもあって、総アクセス数がたゞ今 36.700 余り。私としては勿体なくもありがたき数字ではあるけれども、世間一般を見渡してみれば、なんともさゝやかにして目立たぬ活動だ。

 目立たぬことに不満や無念があるわけではない。いかにも自分らしいと感じている。いや違う。本音は我ながら、もっと傲慢だ。活動とは、本来かようなものだと考えている。実力以上に数字が上るのははしたない、不潔だと感じる。恥かしい。
 むろんいじけた自意識である。身銭切っての同人雑誌にばかり書き、世間の隅っこで金にならぬ仕事ばかりこなしてきた男の、ねじくれた文学観に過ぎない。 
 しかしその感覚を反省し改める気は、今のところない。それどころかかえって自覚し直す見聞が、この数日間にあった。稿を改める。