一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

菜飯炊く

 とにかくイレギュラー睡眠を解消しなければならない。不規則は万病の元である。今宵はユル~イ家事だけをして、眠くても眠くなくても、さっさと床に着こうと考えた。

 いただいた蕪を四個ともすべて、丁寧に水洗いする。蕪(根)と菜とを切離し、菜はさらに茎(実際には葉柄か)と緑葉とを切り分ける。つまり白と薄い緑と濃い緑とを別べつのボウルに三分したわけだ。
 蕪はすべて皮を剥き、薄切りにする。一枚いちまいがなるべく似た形となるように、切りかたと順序を工夫して、水受けと網目との二個ひと組になった水切りボウルに寄せる。手を突っこんで密着や重なりをほぐしてから、塩を振って布巾を掛けてしばらく措く。相当の水が出るはずだ。
 緑葉部分と茎部分は、別べつに塩茹でする。二度手間のようでも、茹で時間に相当の開きが必要だろうから、初心者にはこのほうが間違いがない。

 ちょうど冷凍小分け飯が底を突いたところなので、飯を炊く。いつものごとく米を研いで、水加減して、乾燥切昆布をさらに刻んで投入。盃一杯の料理酒を差す。小一時間ほど米に水を吸わせてから炊飯器のスイッチを入れるのだが、今宵はここで塩茹でして冷ました蕪菜の葉部分を、ごく細かく切って投入した。菜飯だ。緑葉部分の半分以上を使った。余は水を好く絞ってからラップして冷凍庫だ。あとは炊飯器の仕事となる。


 薄切りした蕪は浅漬けにするのだが、漬け汁は例によりヤマ勘だ。酒100 cc. 米酢 50 cc. にしてみた。味見すると、かなり酢が強い。が、この後を看ないとまだ判断できない。出汁を 冷ましてから 50 cc. ほど。酢と同じ程度は必要だろうと、根拠のないヤマ勘。砂糖をスプーン三杯。ガリを漬けるようなかなりの甘酢にしたいのだが、ひとまずこの程度にする。というのは、今回はここに蜂蜜を投入するつもりなのだ。蜂蜜の仕事ぶりを確かめてから、ふたたび砂糖加減をし直しても遅くない。
 味見して、やはり砂糖を少々足した。塩はあえて使わない。蕪を塩洗いしても、どうしたって水出しした塩気がいくぶん残ることがある。それで好いとする。塩分不足だと、日持ちに自信を持ちかねる浅漬けになるかもしれないが、今回のテーマは「甘い」浅漬けである。

 漬け汁はこんなもんだろう。水出しなった蕪を塩洗いして、水を切り、ほぼ乾いたところで漬け汁に投入した。水出ししてしまっては風味が飛ぶだろうとの、もっともな常識もあるところだが、今回のテーマに沿って、これで行くことにした。なにごとも経験だ。
 表面にあまり空気がふれぬよう、ラップで密着覆いして、容器の蓋を閉じる。あとは冷蔵庫の仕事だ。

 飯が炊けた。やや蒸らしてから内を覗くと、菜が表面を覆っている。杓文字でシャリ切りし、天地返し左右返しして混ぜ、もう一度蒸らす。軽く一膳だけ、飯茶碗に盛ってみた。視た眼も味も悪くはない。

 さて、一番の難敵は茎部分(薄緑部分)だ。とりあえず時間長めに塩茹でし、冷ましてから一回使用分相当に小分けして、冷凍庫に収めた。調理法は、これから考える。