久かたぶりに『やもり』を読んだ。今回は『廣津和郎全集』ではなく、あえて昭和三十九年刊行の新潮社版日本文學全集『廣津和郎・葛西善藏集』で。ひと回り小型の、いわゆる赤箱全集である。かつてこの本で、広津和郎を初めて読んだ。当時この版のバラ本が、…
「面目ねえ。野郎め背中に眼がくっついていやがって」 「とっつぁんのせいじゃねえよ。気にするなってことよ」 相模の彦十も、めっきり齢をとった。 藪から棒になにかって、鬼平犯科帳の噺で。彦十のしくじりというのが、尾行相手に感づかれて、巻かれてしま…
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