一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

いくらか

編集部への手土産。ボロは着てても心は錦。 久しぶりの外出仕事。雑誌の新人文学賞の授賞式。その後に、受賞した若い小説書きと、最年長選考委員との対談を収録。つまり聞き手として、若者から今どきを教わる得がたい機会だ。 選考委員と聴くと、なにやら偉…

補助金

なくて七癖。アキレウスの踵。弁慶の泣き所。いやいや馬鹿は死ななきゃ治らない。宿痾のごとき悪癖というものは、どなたにもおありのようで。 使い回しが利き、保存期間が長いとの理由で、玉葱と人参とを切らさないようにしている。偶然、同時に切れた。さら…

なんとも

小林勇『人はさびしき』(文芸春秋、1973) 生前ゆかりあって親しく交わった人、仕事上での恩人など、逝きし人たちとの思い出を回想した、人物論集。著者は、元岩波書店会長。創業社長岩波茂雄の薫陶を受け、やがて娘婿となった人。それよりなにより、岩波新…

断じて

長谷川如是閑(1875‐1969) 座右の銘を「断じて行わず」とした巨人があった。今では、採り上げる人もめったにあるまいが、途方もなく偉かった人と思っている。とやかく云うまえに、この人の言に、耳を傾けようかと思う。 東京深川に生れた。祖父の代まで大工…

一か所

ヘロドトス(b.c.480?‐420?) 超大国ペルシアが、周辺諸国を糾合しながら、我が国をもひと呑みにしようと、大軍で押し寄せてきたのさ。こっちはまだ、小さなポリスに分散したまゝ、それぞれに暮している時代でね。我ら皆が、ひとまとまりのギリシア人とい…

ひと粒論

ラッキョウ漬を切らせたので、銭湯からの帰りに買物。梅干と、ニンニクのシソカツオ漬と、ラッキョウ漬は、同じ棚に並ぶ商品だが、いずれもサミットで買うことにしている。今日はラッキョウ漬だけ。一袋213円(税込)。小鉢に移すさいに数えてみたら、25粒だ…

白足袋

長谷川如是閑『日本さまざま』(大宝輪閣、1962) 早急をサッキュウと読んでも、ソウキュウと読んでも、いずれも正解だそうだ。かつてはサッキュウが正解で、ソウキュウは誤用とまではゆかずとも、慣用読みといった扱いだったと記憶するが。 「NHKラジオ深夜…

クリトン

ソクラテス(b.c.469-399) ほどなく夜明け。今日も好い空模様だ。が、いよいよ時は切迫。今日こそ彼を説得しなければ、取り返しがつかなくなる。こんな場合というのに、彼は何事もなかったかのように、熟睡している。 「おや、来ていたのか。起してくれゝば…

名残正月

栗きんとんが、これでヤマ。私独りの、勝手な正月明けである。 商店街の個人商店が町の供給システムの大半だった時代は、各店舗の「新年は〇日から」といった貼紙を目処に、買物や献立を考えたものだった。開店はしても、松が取れるまでは、まだ本格始動とは…

順不同

阿闍梨餅本舗「満月」(左から)京納言、阿闍梨餅、満月 またも身にあまるご進物に与ってしまった。京都銘菓に不案内の身には、もちろん生れて初めて視る菓子だ。なるほど、味にうるさいかたがたは、こういう菓子を召しあがるのか。 京納言は棹もの。小豆粒…

唇のしわざ

小笠原奈央(1987‐ )日本プロ麻雀連盟所属竹書房『近代麻雀』web「雀士名鑑」より無断で切取らせていただきました。 愛称は「不屈のベビーフェイス」。ツイッター上でも、画像検索でも、コスプレやカラコンや、変顔やイタズラ描き顔の写真が、無数に出てき…

飲む事情

石川酒造「さらさらにごり」「あらばしり生酒」 昨年暮れに、身分不相応な酒を頂戴している。まだ封を解いていない。 くださったのは、英文学科の教授であられた大島一彦さんだ。ある時期文芸学科へ出向され、学科主任を兼務された。そのさいに地道に学問だ…

カンカラ

ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン 原題は、The Bucket List. バケツのカタログではない。棺桶への支度一覧、というほどの意味。余命を宣告された二人の老人患者が、思い残しを解消するために、病院を抜け出して、とんでもないことをヤラカス噺だ…

雪解け

鏑木清方「二人づれ」(部分) 雪だったのか。シマッタ! 一昨日から昨日へかけて徹夜。取返そうと十二時間も寝ていた。途中何度かトイレに起きたが、窓を開けてみなかった。そういえば半睡半醒のなかで、妙な音を聴いた気がする。近くの工事現場で、砂利を…

納豆論

たかゞ納豆、されど納豆。 なにとともに召しあがるかについては、愛好家それぞれに、けっして譲れぬ持論がおありのようだ。ネギは不可欠とおっしゃるかた。玉子を落してゆるゆるで召しあがるかた、その他。 私はワサビを少々混ぜるだけ。高級はいけない。チ…

息を詰めて

どなたか、ですって? いゝんです、お解りのかただけで。 おかげさまで、我がレッドウェーブ。ただ今、レギュラーシーズン16勝無敗。15勝1敗のデンソーとともに、プレーオフ進出を決めました。ありがとうございます! Wリーグは今シーズンから1チーム増えて…

注意深く

お土産に頂戴してしまいましたよ。とらやの羊かん。注意深く、いたゞいております。 昨年暮れの何日だったかの日記で、我が常用間食のひとつ、ひと口羊かんを紹介した。子どものおやつ用というか、ごく廉価で、ビッグエーの棚に並ぶ駄菓子のひとつだ。 駄菓…

押詰って

――それではこゝで、選手を先導する白バイをご紹介いたします。まずセンターライン側が~、続いて歩道寄りが~(警視庁・県警の交通機動隊に所属する巡査長または巡査のご紹介があって)。「選手の安全確保に、全力を尽します」など、ご当人談話が紹介される…

シキネン

左から「新」「古」 勝手に「シキネン鍋替え」と称んでいる、私ひとりの年越し行事があって、今年も神秘的かつおごそかに、嘘、鼻唄混じりで日常家事のごとくに、催された。 五年半ほど前に、急性心不全の発作に見舞われ、救急車騒ぎを起した。肺に水が溜ま…

居場所

大晦日、元日、そして今日の三日間に、ファミマで煙草を買った以外は、口をきいていない。独り言はたくさん云ったろうが。鼻唄もたぶん。日本語を耳にしていない。いたゞいた賀状には眼を通した。メールの応答もしたが。 苦にはならぬし、寂しいとも味気ない…

〈口上〉嬉しきこと

2022.1.1. ―― 口 上 ―― おめでとうございます。つゝしんで初春のお慶びを、申しあげます。 貴台さま、およびご家族さまに、ひとつでも多くの、嬉しいことや愉しみなことがございますよう、お祈り申しあげます。 北国では、例年にも増して雪の元旦をお迎えと…

迎春

2022. 1. 1.

さぁ

さぁ やって来い新しき年 なんぞといって みたところ しょせんは今日の 明日に過ぎぬ恥多く たゞさらぼうて いじましく ちいさく淀む しみったれ盗れるものなら 盗ってみやがれさぁ やって来い去りゆきし年 なんぞといって みたところ つまりは今日の 昨日に…

意思表示

年に一日、旦那になる。頭(かしら)とご町内の関係。 「いつもの、お持ちしていゝっすか?」 尾西組の若い衆から、声を掛けられたのは昨日だ。毎年の年末行事である。 「わりい、明日にしてもらえる?」 これから出掛けようとしていたところだった。で今日…

穴だらけ

過剰に几帳面な均衡・公平・平等への執着は、精神疾患と紙一重だそうだ。 一人用の盆に飯茶碗と一汁三菜。好物から箸をつける人、好物を最後の愉しみに取っておく人。いろいろだろう。経験からおのずと形成された、自分流の順序で食事をしているはずだ。 と…

BGM

DONALD BYRD:A NEW PERSPECTIVE 武内陶子さんの「ごごカフェ」も聴くし、荻上チキさんと南部広美さんの「セッション」も聴く。夜間だと「NHKラジオ深夜便」を聴く。生活不規則につき、毎日欠かさずのリスナーというわけではない。 年代物のラジカセを、台所…

玉子論

さしあたってなんの差障りもないけれど、たゞちょいとした、我が心の問題。 玉子を毎日一個ずつ、摂取することにしている。調理らしいことをするのでなく、目玉焼きか玉子焼きだ。目玉焼きであれば、ウィンナか野菜を軽く炒めて添える。玉子焼きであれば、そ…

えっ

私の好物。お好み羊かん、煉り・小倉・塩・抹茶各二個、栗一個の、一袋計九個入りで266円(税込み)。愛知県豊橋市の杉田屋製菓さん製造。 えっ、羊かんなら、とらやさんだろうって? さぁて聴いたことねえなぁ。 ――最近になって、手記や資料が出てきまして…

異例

古来云う。明けぬ夜はない。また云う。冬来たりなば春遠からじ。ありがたや、ありがたや。 一度書いてしまったものを、あまり読み返したりはしない性格だが、ふと変な気を起して、過去幾日分かに眼を通してみたら、あらためてうんざりした。 老残の妄想と愚…

冬支度

♪雪を蹴りぃ 金がない~ ソリは行くぅ 金がない~ ジングルベェル ジングルベェル 金がない~ 今日は楽しい 金がない オゥッ! 家庭持ちたちが「お先に」していってしまったあとに残された、独身で彼女もなく行き場もない、零細出版社の社員たちが、酔いつぶ…