一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

賞味期限

めっちゃエモい。けっこうヤバくね? タモリ・たけし・さんまの三人ゴルフという番組があった。私がテレビを観ていたということは、十五年以上も前のことだったか。このお三かたがゴルフコースをプレーして周る。各ホールごとに、途方もない制限や約束事が設…

終果摘せず

おそらくは本年最後の、花梨通信となる。 梢ちかくの細枝に、団子兄弟みたいな四果が密集結実したために、しなってフェンス越しに往来へと身を乗出していた枝があった。私所持の脚立と道具類とでは、とうてい手の届かぬ高さにあった。ご通行人か車輛にご迷惑…

便りのないのが

この時期の日記はさながら、いだだきもの日記と化してしまったごとくだ。 当然ながらそのつど、礼状をしたためる。ように心がけてはいる。複数件重なってしまい、ひと仕事となる場合もある。明日こそまとめて、気合を入れて書こうなんぞと、日延べしてしまう…

予備校芋

俄然闘志が湧いてきた。 いただきものを、さっそく試してみようじゃないか。なん年も前に一度試したきりで、手順など思い出せない。失敗したって、どうって問題じゃない。 よく洗ったさつま芋をひと口大にカットして、水にさらしておく。ほかの作業を進行し…

冬晴れ

西高東低の気圧配置が緩み、晴天に恵まれて風も弱まりました、とラジオではおっしゃるのですが、老人には寒くて寒くてでしてね――。 原因は私にある。せめても陽射しのよろしい午前中の数時間を、眠っている。昼さがりともなれば、太陽はお向うのマンションの…

皮から

久びさに、じつになんとも久びさに、魚大臣となった。 旧い仲間であるジャズバーのマスターからのご恵贈品だ。真空パックされた切身が、鯖三枚、鱈三枚、鰈二枚である。ひと塩されてあり、このまま焼けばいい世話なし商品らしい。 むろん魚大好き男である。…

プレゼントで遊ぶ

いただいたチョコレートは、三色の小さな巾着包装の詰合せで、それぞれに木の葉型の粒チョコが七個づつ収められてある。 スカイ袋:ミルク3,ブルーベリー2,ヨーグルト2。 クリーム袋:ミルク3,ビター2,抹茶2。 ローズ袋:ミルク3,モカ2,ホワイ…

いただくばかりで

元気を出せ、ということだな。 卒業論文に宮武外骨論を出してくる男だった。そんな評論を面白がりそうな教員は、左右を視回しても他にはなさそうだったから、私のゼミに籍を置いていてよかった。その時分のご縁を多とされて、今では引きこもり老人を元気づけ…

茄子に謝れ!

性懲りもなく、麻婆茄子だ。一種の気晴らしである。 今日も池袋へ。ぐだぐだと眼移りするばかりでは先へ進めない。決断してしまえ。ピタッと気分にはまる品物が見つからなくとも、まァこのていどであればと我慢できる品があれば、妥協してしまえ。そう自分に…

師走報告

駐輪スペースのコンクリ打ちと門扉との、角っこです。憶えてますか? 師走一日です。記録破りの暑い夏でしたが、あっという間に寒くなりました。一昨年までは、この場所には桜の落葉がマウンドを成すかのように、吹き溜ったものでした。昔からそうでしたよね…

日曜、あー怖かった!

予定外だったが、最近眼醒めた「めかぶサラダパン」を食べたくて、タカセ珈琲サロンへ入ってみたのである。しかし……。 土曜日曜の池袋は、私ごときが歩いてよろしい地域ではないと、かねてより承知している。が、人と会うわけでも、買物をするわけでもない。…

お茶漬けサラサラの日

学生時分には、あんなにお世話になったのに、永谷園さんのお世話にならなくなって久しい。常備品ですらあったのに。いつからだろう。記憶がない。 起床すると、今日こそは洗濯を済ませようと思う。思いながらも来信に眼を通したり、ついついユーチューブ動画…

師走へと急ぐ

「アッという間に、師走ですねえ」 「ほんとに。早いですねえ」 往来でお顔見知りのかたとすれ違うと、判で捺したようなご挨拶になってしまう。 やらねばならぬことは、山ほどある。溜りに溜っている。が、今日じゅうに済まさねば世間が渡れぬというほどの用…

寿司を食う

名残りの法事ということもある。 道祖神の役目をも担ってきた石地蔵に水をかけて、法事は済ませたようなもんだが、じつはまだひとつ、済ませるべきことが残っている。 かつて馴染だった寿司屋の親方とおかみさんとに、ご挨拶に寄る。 父がまだ要介護低レベル…

黄金の道

親父、十七回忌だぜ。あの日から、満十六年ってことだよね。 昼飯を摂らせるのに、えらく時間を食った日だった。予定の量をどうにか食べきって、すぐに横臥させるもなんだから、しばらくは斜めになっててはどうかと、毛糸帽と毛布とでくるんで蓑虫のようにし…

取りとめもない

幸せ、と云うべきなんだろうなあ。 どうやら雨があがったようなので、外出には遅い午後となったが、池袋まで出る。明日の足廻り先が多いと、とかくウッカリのもとだ。自分のテキパキ能力に自信がもてない。今日のうちに足せる用意は、済ませてしまおう。 駅…

齢のせい

二の酉である。 今年も出かけないことにした。人混みがしんどそうだ。それに、商売にも事業にも無縁な私に「商売繁盛」でもあるまい。家族もない独居老人に「家内安全」でもあるまい。自分一個の身の始末であれば、わが町の神社へも菩提寺さまへも、頻繁にお…

巡回散歩

歩かねば。躰を動かさねば。 肌寒くはあっても、日和の好い日曜だ。とりあえず家を出る。まずは神社の境内で、公孫樹の幹に手を当ててみる。昨日、百日紅の紅葉をしげしげと眺めたからだろうか。今日は黄葉を観たくなった。世話役さんが掃除をなさってほどな…

百日紅

児童公園にただ一本の百日紅(さるすべり)が、見事に紅葉している。 花たちの主張も遠慮がちに見えた猛暑のころ、独り気を吐いていたのが百日紅だった。徒歩五分圏内のごくご近所に、ここにもあったかと思うほど百日紅を庭木とされるお宅がいく軒もあって、…

歳末支度

陽射しが好いので、歳末の支度に出かけようとした。 郵便受に電気料金の請求書が届いていた。待てよ。先月分は払い込んだかしらん。戻ってカレンダーを視ると、ゼムクリップで封筒が留めてある。太マーカーで「11/14〆切」と、私の字で書いてある。イケネッ…

存立危機

いま食べてるのは、オニオンスライス? スライスオニオン? 『深夜食堂』のとある回に、レバニラかニラレバかという大問題に、正面から取組んだ噺があった。 バディを組む先輩男刑事と後輩女刑事とが、連れだって来店。職務中の深夜休憩だ。一人はレバニラ炒…

ワァーッ

老舗の文芸同人誌『朝』47号のご恵送に与った。発行人である村上玄一さんのご好意による。 村上さんによる連載『自慢風まかせ』も、はや十回となった。文芸編集者として数かずのお仕事をなさった半生の交友を懐かしく回想した、自伝風文章だ。目次区分として…

ヤマまたヤマ

老人にだって、食欲の秋はある。クマやリスじゃなくたって、冬に備えての体力づくりは必要だ。 野菜を買い整えたと記したのは三日前だ。さっそく惣菜に仕立てたと記したのは一昨日だ。そして昨日と今日との三日間食べ続けて、目論見どおり麻婆茄子がめでたく…

虫穴さまさま

おやッ、末っこがいない。 花梨樹のひと枝が、往来に身を乗出している。枝の中どころに実を着けたらよろしかったものを、選りにも選って梢近くに、あろうことか三個連続するように身を着けてしまった。さながら団子三兄弟みたいに。末成り(うらなり)という…

顔を立てる

顔を立てる、という気遣いも、そりゃ必要でしょう。 今秋の秋刀魚漁獲量の全国集計がまとまったそうだ。対昨年比では、1,6倍の総水揚げ量だったという。宮城県気仙沼のリポーター氏によれば、気仙沼港の水揚げ量は、対昨年比2倍を記録したそうだ。全国四位の…

風流飯

食材がいっせいに切れた。調味料類にも底衝き間近のものがある。食糧買出しの週末となりそうだ。 かような巡り合せとなるのは、当然とも云える。なにかを切らせたら、どうすればそれなしに食事できるかと考える。あり合せで済ませる。とりあえず我慢するわけ…

いろんな景色

「あァ、あとザーサイね」 隣のテーブルに腰かける中年男性から声がかかった。 商店街の中華料理店だ。ラーメン屋と称ぶのが正しいか。ご店主は奥の厨房にいたきりで、ホールは女性店員さん一人でとり捌いている。四人掛けテーブルが五脚だけの店だ。男はモ…

お寒くなりますが

出掛ける予定がある。炊事の時間がない。で、ベーカリーのお世話になって、いつもの他愛ないゲン担ぎ。今日はチーズかつサンドイッチとした。相棒はベーコンチーズとコーンマヨだ。 「お~さぶい。冷えるわけだぁね、気がついてみりゃあ、お酉さまだぜ」 芝…

信じたい

「あのゥ、ひとつ教えてください。以前ここにあった、ほら、ボトルキャップを回収する小型ボックスは、廃止されちゃったんでしょうか?」 しばらく疑問を抱き続けたあげくに、とうとうやむにやまれぬ気分になって、今日訊ねた。愛くるしいショートカットの小…

麦わら帽子

♬ 麦わら帽子は もう消えた 田んぼの蛙は もう消えた(吉田拓郎) 当りめえだろうがよ。季節が違わい。そりゃそうだけどもね、眼の前の景色は、俺が知ってる池袋とは、あんまりにも違う。 三越がない。今はヤマダ電機だってさ。ビックカメラだって? 知らね…