一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ありがたい

ズズズズッ、プルプルプルプルッ、擦れ合うような音に眼が醒めた。ここ数年姿を消していたネズミどもが、久しぶりにやって来たのかと、咄嗟に不吉な想いが湧いた。眼覚しは設定時刻の三十分前だ。起床することはかまわない。 ガラス窓とカーテンとの間で、雀…

中間地点

中間地点より拙宅を望む(東→西)4:31 a.m. 汚れものが溜ってしまって、洗濯機三台と乾燥機二台とを稼働させた奮闘の模様を、やれやれという口ぶりで記録したのは、三週間ほど前のことだ。これからは心を入換えようと念じたのである。週に一度は洗一台に乾一…

文脈

「やれやれ、今日もけっこうなお日和で……」 往来でご近所さんとのご挨拶。先方もトホホという表情で「ほんとうに……」 情景を想像できなければ「やれやれ」の意味が解らない。「トホホという表情」の意味も伝わらない。 まことの意味は「今日も暑くて参ります…

一匹の

今年も、この季節が巡ってきた。拙宅のわずかな敷地内でも、雑草群のあいだを縫う飛石の上で、ミミズが絶命する。これが今年の一匹目。今月から来月にかけてあとなん匹か、命果てるはずである。 なまじ草むしりに精を出したまま、念入りな水撒きを怠っている…

過ぎちゃって

キャ~ッ、どなたか助けてェ、教えてくださ~い! 今朝起きて、ツイッターをチェックしようとしたら、バツになっちゃってる~ッ! そんな奴、おれへんやろー(大木こだま)。 世界中に浸透しているにちがいない呼称やロゴマークが、一瞬にして変更されてしま…

無意味なこだわり

週二回の、生活ゴミ収集日だ。 なにかにつけて横着でなりゆき任せを極めこんじゃいるが、ゴミ出しについてだけは、自分なりのこだわりがある。同じひと袋であれば、重い袋を好しとする。同じ重さであれば、小袋を好しとする。つまりゴミの密度を問いたいのだ…

朝だ

朝だ。ザマアみやがれ! 現代詩と現代思想の研究家であるお若い友人から、雑誌の特集企画の参考とすべく、アンケートに応えよとの要請があった。私はもはや現代人たるの資格を喪失した人間であり、ご意向に沿う条件を満たさぬものだというのが、まずもっての…

影の魔力

予想したとおりだ。親方に入ってもらって、枝を払っていただいてからいく日も経つので、裏木戸を抜けて狭苦しい場所へ入ってみた。樹木たちの根かた一帯には雑草が芽吹いてくる気配も見えない。 助手の若い衆と二人して入ってくださった。若い衆は梯子を据え…

防火演習

消火器はけっしてむずかしいもんではありません。動作はたった三段階です。レディースにもシルバーにも、キッズにだって操作できまぁす。 真白い粉のような泡のような薬剤がシューッと、ものすごい勢いで噴出しますが、人体に有毒ではありません。それに今日…

入荷情報!

『キネマ旬報』バックナムバー。すべて超美本。段ボール大箱に五個。およそ三百数十冊。リスト未作成につき、内訳詳細は後日。昔の人がおっしゃったとおり、ある所にはあるもんだ。 古本屋研究会。と名乗ったところで、なにも研究するわけじゃない。ただただ…

伯父孝行

米処の親戚から、保存のきく主食の詰合せをお贈りいただいた。さような言葉は実在しまいが、私勝手に「農協セット」と称ばせてもらっている。いかなる身の上となろうとも、けっして無駄になることのない実弾である。ありがたい。 その親戚とは、従弟の夫人と…

少数意見

これだけは珍しく、どなたにもご同意いただけるであろうこと。 スイカやメロンを食すさいに、どこまでを実として賞味し、どこからを皮として残すかという問題。スプーンを使いながら、この件を考えたり迷ったりしたご経験のないかたは、まずいらっしゃるまい…

熱暑対策

名店と提携した、一流メイカーの商品だ。大好物だが、日ごろ自分では買うことがない。理由は明快だ。ディスカウント・スーパーにて、廉価の商品から順に手を伸ばすのが習慣だからだ。 おまえは味音痴だから、さようなことを云って涼しい顔でいられると、しば…

栄誉ある

諸君は、あらゆる軍事行動のうちもっとも困難なる作戦とされる撤退戦の、栄誉ある殿(しんがり)隊の精鋭諸君である。 つい一昨日までは、諸君に続く多くの新兵や中古参兵を従えて、太陽に向って進軍していたのである。近隣住民から広く知られ、去りし花時期…

ズレる

これも拙宅の風物誌。年に一度のぜいたくだ。 今年も元村君が、ご郷里北海道の名産の巨大メロンをお贈りくださった。昨年も一昨年も、この時期に大ぶりメロンの写真が揚がっているはずだ。 札幌勤務だった三十代後半の元村君が、一大決心をして勇躍上京して…

古戦場

私にとって日暮里から谷中界隈を歩く気分は、古戦場巡りに似ている。懐かしさも悔いも、多々ある。想い出したところで、書けぬことだってある。 米寿の恩師を囲む集りいらい、クラス会は六年ぶりとなる。この間に恩師は他界された。 会場は母校正門真向いの…

風物誌

郷里の老舗による保存食の詰合せが届いた。これも従兄によるお心遣いだ。それぞれいかなる食品か、たしか昨年の日記に詳しく紹介ご披露した憶えがある。今年もこの季節が巡ってきたと気づかされる、いわば風物誌のごとき年中行事のひとつといえる。 お贈りく…

ブランド品

村上から鮭が届いた。塩引鮭で有名な、越後村上である。 むろん鮭一匹丸ごとではない。鮭の身や、使える部位を巧みに調理した加工食品だ。また村上に昵懇のかたがあるわけでもない。柏崎在住の従兄が、村上の老舗商店の名品をお手配くださったのである。が、…

スタンバイ

今日も暑くなりそうだ。珍しく人並の時刻に起床したので、朝の真似事でもしてみる気になって、郵便受けを覗きに出てみた。雑草の伸び具合なども、明るい陽射しのなかで正確に視ておきたい。 と、駐車スペースの隅の窓の下に、視覚えあるアルミ梯子が横たえら…

点検

やはり歪みが来ているなァ。経年使用による想定内変形か、それに加えてこの熱暑による一時的変形だろうか。だからクソ暑い日に調べなきゃなんねえんだ。かろうじて想定内数値ではあるが、要注意だな。お~ィ、記録よろしくゥ。 私は下り電車を待っているので…

初歩の初歩の初歩

日本大学藝術学部を母体とする雑誌『江古田文学』が主催する文章講座で、この夏もお喋り役を務めることとなった。以下はご案内。 日時:2023年8月9日(水)、12:30~14:00(12:00 より受付) 場所:日本大学藝術学部 江古田校舎 西棟5階 文芸ラウンジ (西…

暑中憚りながら〈口上〉

年々歳々の異常気象、もはや年中行事のごとき熱暑の日々を迎えております。いずれも様におかれましては、ご体調管理にご工夫の毎日かと拝察申しあげます。 また台風シーズンでもございませんのに、時ならぬ集中豪雨による不慮の災害に遭遇されたかたにおかれ…

ブログ道

当「はてなブログ」表示画面より。 世に云う「炎上」というようなことは、私にはありえない。ありがたい少数読者さまやどこのどなたと承知している知友といった、いわばごく限られたサークル内に向けて更新されてきたブログの気楽さである。同時に情けなさで…

暑中冷や水

なん十年ぶりかで、コート内に足を踏入れる。ゴール下で腕を一杯に伸ばし挙げてみる。ゴールネットははるかに遠い。ましてリングは……。こんな上空のリングに指の第一関節が触れていたということは、かつて自分はどんなジャンプをしていたのだろうか。半信半…

お手入れ

塩分補給用のキャンデーを頂戴した。 熱中症予防に小まめな水分補給とは、世間知らずの私ですら口癖のように復唱するけれども、塩分摂取については失念しがちだ。 そもそも私は高血圧疾患のキャリアだ。四十代に早ばやと脳梗塞を経験した。若年発症だったた…

下司上等

「闇鍋ジャーナル」ニュース解説動画より、無断で切取らせていただきました。 このところ、田北真樹子さんのファンである。産経新聞社月刊『正論』編集長でいらっしゃる。第一線にてご活躍中の出版人でありジャーナリストであり言論人である。世間知らずの私…

施餓鬼

金剛院さまのお施餓鬼会である。餓鬼道で飢える亡者に水や食糧を施す日と云われる。他界したもののいまだ成仏に至らず、餓鬼道を彷徨っている家族へ、水と食糧とを届ける法会とも聴いた。解りやすく申せば、あちらの家族に通信する日だ。盆の帰宅要請につい…

夜明け仕事

壮観、洗濯機 4.5キログラム槽三台使い! むろん実態は壮観どころか、たんなる無精である。肌着と靴下、Tシャツ、パジャマなどで一槽。ジーパンとジージャン、衣替え後に怠けていた冬物ジャージだの作業用長袖体操着などでもう一槽。さらにシーツ代りのタオ…

作業見物

高いところ、地中や水中深いところ、狭いところ、足場の悪い危険なところで仕事をなさるかたには、無条件で尊敬の念が湧く。 小雨もようの日、二日間にわたって拙宅前からほど近くで作業をなさる二人組があった。設営であれ清掃であれ処理であれ、とかく作業…

季節の装い

「多岐さん、いらっしゃいますぅ?」 今年もこの時期がやってきた。多くのかたにご迷惑をおかけしてしまう。 宅配便の配送員さんの声だ。普通ならとっくに定期人事異動で担当配置替えになってるはずが、「なぜか俺は動かないんだよねぇ」とおっしゃる、この…