一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

ことば

松さげる

門扉左右の松をはずす。玄関玉飾りをおろす。空気や水の入口だの鬼門の窓だのを守護していた裏白の輪飾りをすべて集める。 昨日七草のうちに下げるべきだったろう。そう思わぬではなかったが、立込んでいた。心急いていたのだ。閑用として翌日回しにしてしま…

にわか報告

お大師堂前には、大きな藁囲い。 先を争っての初詣には興味がない。「怠け者の節句働き」という例えもあるが、ふだん寄りつきもしない癖にこんな時ばかり熱心な振りをしてみたところで、どうなるものでもあるまい。弘法さまにも仏たちにも、事態は丸見えにち…

こんなもんです

「子どもは寝る時間ですよ」母さんに云われて、いったんはベッドに入った兄妹だったが、遠くから切れぎれに聞えてくる笑い声や音楽に起され、窓辺に寄る。声や音楽は、かなり離れた隣家から聞えてきていたのだった。 「子どもたちが唄いながら木の周りを回っ…

回してちょうだい

「ご町内」という語があんがい好きである。 今年のさていつごろからだったか、回覧板の材質が変った。カラー印刷された光沢紙をボール紙の芯に巻いた従来のものから、樹脂芯の表面をラミネート加工したものになった。芯も表面も、石油製品となったわけだ。傷…

ごっこごっこ

「もーいいかぁい」 ほかに人影のない児童公園に、黄色い声が響きわたる。五歳くらいの、度の強い眼鏡をかけた男の児だ。 本日のチャント飯。いつもどおり主菜なしのただただ品目重視だ。 ・粥飯(昆布・若布・生姜炊込み、トッピングは擂り胡麻・ちりめん山…

たった二週間

上は今朝、下は十月二十四日付の日記「念願の植替え」に用いた写真の使い回しである。 彼岸花の第一球根群を二分割して植替えてから二週間あまり経った。時期も技法もわきまえぬ無謀行動だから、この機会に枯れて消えゆく破目に陥っても文句は云えないと、覚…

イヌタデだろうか。紅とも赤紫とも断じがたい、珍しい花色だ。玄関前一帯に満開である。とはいえ人間の眼にはいっこうに目立たない。 今年は春と夏の草むしり時期が偶然効果的だったものか、地表がシダとドクダミとヤブガラシに覆い尽されてしまうということ…

修繕

拙宅北側に隣接する児童公園にて、今朝九時半から木製ベンチを修繕なさるかたがある。資財を積んだトラックが、往来からの視線を遮るように横づけされたのは、おそらく九時前だったろう。 経年変化によってほど好く変色し摩耗し、表面に艶が出たベンチは、そ…

痕跡

はなはだお見苦しいものを、お眼にかけます。お食事中のおかたは、どうか他へお移りくださいますよう。 右上腕、ほとんど肩というあたりに、一円玉ほどのうっすらとしたケロイドがある。母から聴かされたところによれば、生後初の種痘を受けたさいに、痕をし…

秋の色

この季節がやってきたか。 大北農園から、ご丹精の茄子が届いた。この秋の先頭走者だ。大北農園については、これまでにいく度も書いたが、嬉しいしありがたいから今日も書く。 旧い学友の大北君はリタイア後、趣味と健康維持とを兼ねて家庭菜園に力を注いで…

教訓

このところ酒場へ足を向ける機会がなくなってしまったため、とんとご無沙汰してしまってるが、美学者の森田 暁さんとは古い友達だ。SNS に思わず吹出すような画像が挙った。彼一流の、眩しいようなくすぐったいようなジョークだ。 健康維持を重視しておられ…

身のほど

同学年生三百五十余名。うち夭折者がいく名あって、現在いく名健在か、数えたことはない。卒業アルバム用写真の撮影とかで、とある昼休み、中庭へ全員集合させられたのだった。ふだんはテニスのクレーコートにも早変りする中庭で、テニス部の連中が始終、馬…

明日の秋

物干しに揚って、西方を望む。肉眼では「夏の雲」、ファインダーを通すと「秋の空」である。感性というもんは、たしかに実在して機能してはいるが、信用のおけぬものだ。 昨日のごとき雷雨は論外としても、建材が陽に炙られて蒸風呂状態となった屋内から、暑…

過ぎちゃって

キャ~ッ、どなたか助けてェ、教えてくださ~い! 今朝起きて、ツイッターをチェックしようとしたら、バツになっちゃってる~ッ! そんな奴、おれへんやろー(大木こだま)。 世界中に浸透しているにちがいない呼称やロゴマークが、一瞬にして変更されてしま…

熱暑対策

名店と提携した、一流メイカーの商品だ。大好物だが、日ごろ自分では買うことがない。理由は明快だ。ディスカウント・スーパーにて、廉価の商品から順に手を伸ばすのが習慣だからだ。 おまえは味音痴だから、さようなことを云って涼しい顔でいられると、しば…

ズレる

これも拙宅の風物誌。年に一度のぜいたくだ。 今年も元村君が、ご郷里北海道の名産の巨大メロンをお贈りくださった。昨年も一昨年も、この時期に大ぶりメロンの写真が揚がっているはずだ。 札幌勤務だった三十代後半の元村君が、一大決心をして勇躍上京して…

初歩の初歩の初歩

日本大学藝術学部を母体とする雑誌『江古田文学』が主催する文章講座で、この夏もお喋り役を務めることとなった。以下はご案内。 日時:2023年8月9日(水)、12:30~14:00(12:00 より受付) 場所:日本大学藝術学部 江古田校舎 西棟5階 文芸ラウンジ (西…

富士登山

撮影:丹沢和仁 コロナ禍は明けた。季節も日和も好し。山梨でも静岡でも、ドッと押寄せた富士登山客で大賑いだという。 商業施設・サービス施設にあっては、いささか愁眉を開いたことだろう。だが、過ぎたるはなんとやらで、痛し痒しの問題が生じているとい…

同月同日

少し異なりますが、まあ同じです。 当「はてなブログ」には、参考までに昨年・一昨年の同月同日の日記は、というバナーが設定されていて、日ごろはさして興味もないのだが、つい気紛れにクリックしてしまった。 一昨年の今日は、ユーチューブ動画上の音声に…

どてかぼちゃ

トゥビー・オア・ノットゥビー! この春、老齢の君子蘭を分散移封した。古い鉢に窮屈そうに縮こまっていたものや、欠け鉢から溢れ出して、成行きでそこいらに根付いたりしていた連中を、いっせいに解放。古根を払落して根分け株分けし、病葉を切落してひと株…

なまり懐かし

郷里の従兄が、名物の笹団子を送ってくださった。大好物だ。 製造加工技術も保存技術も長足の進歩をとげて、今じゃ一年中愉しめる笹団子だが、かつては季節食品の印象があった。あるいは拙宅の経済事情により季節商品だったに過ぎず、巷には年間を通して存在…

退役職人

Momoka Japan というユーチューブ・チャンネルに登録してます。 外国人から「日本大好き」と云ってもらう、星の数ほどある番組のひとつですから、続けざまにいくつか観ようものなら、当然ながら飽きます。ホントかいなとの疑念も湧いてきます。が、ももかさ…

お待ちどう

芋蔓式にと申すべきか、数珠繋ぎにと申すべきか、それとも玉突きのようにと申すべきか、用事というものは片づけようとすると次つぎに発生するものだ。 あれを切らしたから、次の買物で補充せねばとその時は思うけれども、少し時間が経つと忘れる。なんか買う…

キッチュの境地

自炊暮しとはいっても、外食や弁当テイクアウトを毛嫌いしているわけではない。 大スーパーはすべからく似ているのだろうが、サミットストアには売場の隅に立派な調理場がある。ガラス張りの面から、一画が買物客から見える。といっても水場だの、まな板工程…

ぴよこチャンネル

「piyoko の韓国 Lab.」というユーチューブチャネルを視聴している。韓国人アラサー美女が韓国の繁華街を食べ歩き案内する動画と、日本各地の体当り旅行で観光しつつ食べ歩きする動画とが四割づつ。その他の随筆的語りが二割といった、バランス良き日韓親睦…

意思表示

統一地方選挙の結果が判明したようである。感想なんぞ、ましてや所見など述べる分際ではない。ただ、私は投票行動を誤ったかもしれない。 わが町ではいつの選挙でも投票所となる区立小学校へと、正午少し過ぎに出向く。朝早くに赴きたかったが、これでも起床…

柄合せ

両口屋是清「ささらがた」 端午の節句を目途とした、季節限定の菓子だ。 漢字では「細形(ささらがた)」だろうか。布地の細かい織柄のことである。江戸小紋などがこれにあたろうか。それを菓子の商品名に援用するのは、職人の行届いた工夫と手わざ、といっ…

撮り妓

「はんなり」さんユーチューブ動画チャンネルよりいただきました。 撮り妓(とりこ):まだ辞書に登録されてないと思います。私の造語です。むろん「撮り鉄」からの借用です。遺憾ながら月並な着想ですから、どこかでどなたかが、すでに使っておられる語だと…

よくある、だって?

「それって、アルアルだよね」 いつごろからか聴かれるようになった、俗語的口語表現である。具体的説明を圧縮してニュアンスだけ通じさせてしまう便利な語法で、私も使ったことがある。が、今もって好きな日本語とは申しがたい。 ご多分に漏れず、一部の職…

雨はどこから

歳月を経ても、この人の唄の力が衰えないのは、詩の力のゆえだと思っている。 炊事だの洗い物だの、台所作業の BGM としては、古めのモダンジャズを繰返し流しっぱなしにしてある。ゴキゲンで解りやすい音、コールマン・ホウキンズ、ドナルド・バード、ウェ…