一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

ことば

憶えて

『道場破り』(松竹、1964)より、上田吉ニ郎。 喜劇役者として実力は認められながらも、脇役に徹してきた長門勇の、初主演作品。腰の低いおとぼけキャラに見えて、じつは神道無双流極意皆伝の腕前。妻の妙(たえ)と次なる仕官の道を求めて、浪々の旅をして…

素足

とある文学賞の選考作業を分担中で、応募作品を毎日読んで過している。不正・情実を避けるべく、作者の個人情報など一切伏せられたものを、読んでいる。中年の書き手と思しき作品も混じるが、ほとんどが若い作者らしく、学生作品も多そうだ。 今春、定年退職…

気づく

「細かいのが四十と、ひいふうみい……八円、お改めください。あとはこれで崩してください」 ファミマやビッグエーでのレジだ。小銭入れがジャラジャラしてきた時には、買物まえに百円未満がいくらあるか確かめてから入店する。両替という手続きなしに、自然循…

老耄

常であればまだ寝ている時間帯に、台所をしていたら、聴き覚えのある声がラジオから流れてきた。安住紳一郎さんの声だ。へ~え。古田新太さんをゲストに、腹を抱えるトークだったが、それはいいとして。 舞台公演中の古田さんが、んじゃ、とばかりに退席して…

あふせ

立川談志さんが、こんなふうにおしゃったことがある。 ――埼玉県熊谷(くまがや)って云うでしょう。あれ、クマガイじゃないのかね。 たしかに上品上生(じょうぼんじょうしょう)の往生を祈願したのはクマガイ直実だし、その史実から名付けられたラン科の山…

ご都合

SNSやユーチューブほか、私設媒体が増えることは、総体的に看れば、好いことと思っている。個人情報が抜かれ、機密が流出したなどという弊害も耳にするし、国際規模のハッカーの横行も取沙汰されるが、それらは機能の可能性に人間の知恵が追付けぬところに生…

過ぎる

「ラジオ深夜便」の上方演芸の枠で、露の瑞(みずほ)さんの噺を聴かせてもらった。女性の噺家さんだが、なるほど上方落語らしくこってりした感じがあった。 噺の前後に、女性の落語作家さんによるご紹介があって、基礎知識皆無の私には、おかげさまで耳寄り…

ものぐさ

FaceBookとtwitterへの加入登録日は、二〇一一年三月十一日である。東日本大震災の夜だ。テレビを点けっぱなしにしながら、パソコンに向っていたが、情報不足がどうにももどかしく、思い余って登録したのだった。 それまではMixiという、今ではあまり同志を…