一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

もしや日本一



 炊きたての豆ごはんにキーマカレー。猛暑に対抗すべく、これでもファイトを掻き立てているつもり。

 一昨夜から、乾物の大豆を水に浸けておいた。昨日はその大豆を炊いた。
 灰汁出しの下炊きと、薄出汁・薄醤油の本炊きとで、たいそう時間がかかる。ご経験者がたのご自慢レシピによれば、もっと時間節約が可能らしい。
 厚手の鍋が向くらしい。私は持っていない。圧力鍋ならもっと向くらしい。むろん私は持っていない。強火と中火を使い分けるといいらしい。老朽化した私のレンジは、一部分が目詰まりして不完全燃焼し、炎に片寄りがある。強火になんぞできない。
 「豆の風味と独特な歯応えとを残して」なんていう芸当にはほど遠い。炊き過ぎは許容できても、炊き不足だけは避けねfばならない。歯のないわが口腔事情による。これでも昔は、かすかに芯が残っているんじゃないかというような、硬めの豆が好きだったのだが、老化には従わねばならない。
 十分に炊いてから、冷まして、昨夜は寝た。(時計の上では今朝払暁だけれども。)で、今日は豆ごはんを炊いた。

 先般、くだもののいただきものをした。「ご返却には及びません。お皿ごとどうぞ」というご口上に甘えて、大皿一枚も頂戴した。
 わが家の食器は、大皿であれ取分け皿であれ醤油皿であれ、寸法にかかわらず丸皿といえば円形、角皿といえば長方形だった。母による選択だ。私は残された食器を、そのまま継承してきた。が、それでは不適当と思える場合も生じて、正方形の角皿を私が買い足した。つい最近、レンゲ型というか雫型というかの小物皿をも購入した。
 くだものを盛って頂戴した大皿は、円でも楕円でもない。花をかたどった不定形皿だ。しかも深さがある。わが家の食器棚には初めての形状だ。いただいた瞬間から、これはシチューにもカレーライスにも向くと、私は直観していた。で、今日である。

 夏には生野菜が必要だろう。スライスオニオンにはシソ振りかけをたっぷり振ってから、甘酢味噌をかける。夏には酢がよろしかろう。郷里からの到来ものである日本海もずくの酢の物には、おろし生姜をケチらずに。玉子に添えるにはいつものウインナではなく、いただきもののベーコンがある。今日もまた、いただきものの活躍舞台だ。
 あとは年中不動のわが薬味皿で、梅干・らっきょう・ニンニク漬に六ピーチーズだ。これでも私にとっては豪華版で、食後にゆっくり休憩しながら、牛乳とインスタント珈琲とを飲めば、老人の腹は満腹である。


 ひとしきり休んだら、炊飯器の中身を小分けおにぎりにして、ラップして冷ます。やがて冷凍庫行きだ。一週間ぶんの主食ができた。

 台風15号が変な方角からやって来て関東に上陸し、観測史上前例のない進路を行くという。ほどなく熱帯低気圧に格下げされ、暴風はさほどでもないという。が、引起す雨には要注意で、土砂災害警報だの注意報だのが、関東各地に発せられた。
 甲子園球場での高校野球は、一日四試合消化の予定だったのが、これから大雨が予想されるとかで、四試合目は雨天順延だという。
 熊本県では、大地震後の復旧作業が進むにつれて、想像以上の被害実態が報告されてくる側面もあって、容易ならざる深刻災害だったことが判明しつつあるという。
 ヘルスメーターに乗って、また少し痩せたかなんぞと呟きながら、豆の煮え具合を視張ってる老人なんぞは、ともすると日本一の幸せ者かもしれない。