一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

しょうがない

 速報! 感動的と残念至極。女子3×3オリンピック最終予選の件だ。
 決勝トーナメント初戦(準々決勝)は激戦のプールDで二位に食込んできたスイス。試合開始は昨日の十九時半。イタリーと開催国オーストリアを上回って上ってきた強豪だが、独特のディフェンス・システムを持つ日本が試合のペースを常にキープ。相手は思うようなバスケができずに、不完全燃焼感が残ったかもしれない。
 日本としては、そこにしか活路はないという細道を、きっちり進んだ勝利。四人それぞれの得意技も全開で、山本麻衣のディープツー(五人制のスリーポイントに相当)も三本鮮やかに決った。

 さてあと一勝で東京オリンピック出場。準決勝の敵情視察で、フランス・ハンガリー戦を観戦。パワフルな両チームで、どちらが来ても、やりにくい相手だ。ハンガリーのポイントゲッターはパワーと運動量を併せ持ち、抑えが効かない恐れがある。しかし個人技と球際(たまぎわ)の強さはフランスだ。全体にフランスチームのほうが獰猛だ。優雅な花のパリなんて、誰が云うのだっ。
 両者譲らず、延長戦までもつれ込んで、フランスの勝利。準決勝の相手が決った。

 ここで不吉な情報。フランスは現在、世界ランキング一位。選手個人ランキングでも、一位・二位・五位の選手がいる。つまりヨーロッパ・リーグのスター軍団というわけだ。
 さて準決勝は零時十五分から、abemaで実況。恐れていたとおり、フランスのパワーが先行し、日本が粘ってついてゆく展開。さすがに世界のスタープレイヤーたち。フランスのディフェンスは思いのほか鉄壁で、山本麻衣のディープツーも篠崎澪のドライブインも徹底警戒された。
 それでも離されかけると、ビッグプレーで応酬してのシーソーゲーム。残り時間一分で同点。フランスにはファウルがかさみ、フリースローで振切る可能性も出てきた。辛抱に辛抱を重ねて、最後に日本に流れが。と思ったとき、相手にビッグプレーが。
 十四対十五の惜敗。善戦健闘、観応え満載の試合だった。試合終了の瞬間、フランスチームの選手たちが関係者席へ走って泣き崩れた姿が、多くを語った。

 決勝進出して、次の勝敗にかかわらずオリンピックに出場、という左団扇にはならなかったが、枠は三つ。三位決定戦に望みを繋ぐこととなった。
 当然ながら、まず敵情視察。もう一つの準決勝であるアメリカ・スペイン戦を観戦。これがまた両チームともに、世界のどこを探したらこんな大型の女族がいるのかというような柱を擁している。上背だけでなく、幅と厚み。女性に対して失礼な形容だが、栄養十分のブリみたいに、ゴロンゴロンした感じ。しかも3×3選手の特色で、動ける。厄介至極である。

 試合は終始アメリカが優勢。三位決定戦の相手がスペインとなることは、早ばや見えた。しかしパワーもサイズも日本よりスペインが上。活路を探す。
 と、アメリカの好プレーにいら立って、スペインにファウルがかさみ始めた。レフリーの判定への不服顔も度重なってきた。しめたっ、ここだ!
 空中戦ではなく、下での競合いと球際の執着。スペイン選手をいら立たせることができれば、勝機はある。チームワークと逆境でのメンタルは、日本チームのほうがはるかに優っていると視た。
 オーストラリア・スイスを沈め、フランスと鍔ぜり合いしてきたのは、伊達じゃない。スタミナでも引けをとらない。燃え尽きぬエンジン篠崎澪もいれば、今大会で世界のディープツー・シューターとして名を挙げた山本麻衣もいる。

 さて、三位決定戦は午前三時十分から実況。あと十五分ほどだ。
 じつは今日、若き友人たちが来訪してくれて、今後の活動についての重要な打合せをする予定が入っている。少しは眠っておきたいのである。
 しかし、しょうがないでしょう、これは。