一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

意気込み

 「ごごカフェ」を聴いても、「ラジオ深夜便」を聴いていても、いよいよ梅雨到来! まるで警戒警報が鳴らされているみたいだ。

 このところ体重が二キロばかり増えた。体感により自分勝手に思い込んでる適正体重よりは五キロ増だ。理由ははっきりしている。生活不規則と深夜もしくは明けがた、つまり就寝前の酒である。
 少し前に、珍しく腹具合を悪くした。拙宅敷地内に自生する、素性のよろしくないユキノシタの天ぷらやお浸しなんぞを、面白半分に食い過ぎたのだ。台所作業の意欲が減退せざるをえなかった。そこへもってきて、外出用件だのユーチューブ収録だのが立てこんで、珍しく多用だった。ついつい買い食いや外食で済ます機会が多くなった。
 さような日々にあっては、かりに明けがた就寝しても陽の高いうちに起床しなければならない。睡眠時間が短くなるぶん、熟睡の質を高めねばならない。いきおい寝る前にちょいと一杯、との考えになる。酒は強力な炭水化物であるうえに、胃のためを思って冷蔵庫からなにか出すということにでもなれば、どうしても就寝直前のカロリー過多は避けられず、体重がリバウンドする破目となる。

 武内陶子さんや須磨佳津江さんのご忠告どおり、うっとうしい季節に向けて、体調を常態に復しておかねばならない。まずもって食生活である。年寄りはかようなものを食しておればよろしいのだというような、無難以外になんら取柄のない惣菜を順次用意して、貧しく平々凡々の食生活へと復するのが一番だ。
 雁もどきを私にしては多めに(大ぶり三枚も)買ってきた。「どんこ椎茸が使えればなぁ、でも予算オーバーだよなぁ」と乾物売場に一瞬立ち停まって視線を投げる。もはや私の癖のひとつで、本気で買う気はほとんどない。

 で、冷蔵庫の残留品とともに煮る。長年にわたって作り続けてきた惣菜ゆえ、味加減など眼をつぶっていてもできる。今回は出汁を強めにしてみた。鰹節に出汁之素の応援も頼み、さらにとろろ昆布を加えた。その塩分力を借りて、醤油を加減しようとの算段である。使い余したまま芽が膨らみかけていたじゃが芋を使い切れて、上機嫌である。
 こんなもんを大量に作っちまってどうする、との心配はご無用。日に一度のチャント飯の菜のみならず、小腹が空いたときの間食代りにも、酒の肴にもなるから、三日もすれば呆気なく食べきってしまう。

 目論見どおり、味はしっかりあるが薄塩の、あっさりした煮物となった。梅雨どき向きだ。塩分過多を気にせずもりもり食べられる。見てくれは相変らず悪い。
 人生七十有余年、雁もどきの味付けだけは身に着いたか。年寄りは、こんなもんを食って、ひっそり生きておればよろしいのだと、自分をもう一度納得させた。梅雨を迎えるにあたっての、わが意気込みである。