一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

花事情



 私にはもったいないような、ツボミみっしり満載の鉢植えをいただいた。

 彼岸の恒例行事のごとくだが、従兄ご夫妻がご上京。つい数日前に、新米をお贈りくださったご夫妻だ。お二人は揃って青山学院大学の同窓生で、つまりは半世紀前のキャンパスラヴ・カップルである。
 この時期には初等部から中・高・短大・大学を総合してのオール青学同窓会が、青山キャンパス全体を会場として催される。OB・OG 向けの大学祭として、おおいに賑うという。学部学科ごとに各部屋に分れての催しがあるため、お揃いで正門をくぐってしまえば、あとはご夫妻まったく別行動となるらしい。
 夫人は屋内で学友との旧交を温めるだけでなく、キャンパス内を彩るサービス活動にも参加し、エプロンを掛けて花の展示販売員に変身なさったそうだ。

 明けて今日、午後の新幹線で新潟へご帰宅だが、お時間をとって拙宅墓所へお詣りくださり、私にも声を掛けてくださった。で、ツボミ満載のお土産を頂戴してしまった。数日後にすべて開花しようものなら、いったいどうなってしまうのか、想像もつかぬほど大量のツボミ群である。

 拙宅の花事情も、貧しいながら着々と進んではいる。彼岸花の季節である。門扉を入ってすぐの第一球根群は陽当りも風通しも抜群の位置だから、毎年第一花は先頭を切って開花する。二花三花と続き、後続の花芽も伸び出してきている。第一花は一昨日の強風と大粒雨脚の被害によって、身を曲げて地に伏してしまったので、脇にブロックを立てて枕とした。
 敷地東側の飛石とブロック塀との狭い間を、間隔を空けながら順次北へ向って、第二球根群は第一花が開き、以下続々と花芽が伸びてきたところだ。第三球根群も第一花がまさに開花寸前。ただし大きな球根群にもかかわらず、後続の花芽はまだ伸び出していない。第四球根群はいまだ開花はないものの、十センチから十五センチほどの花芽が続々として伸び出し始めた。なかのいくつかが、開花してくれるものと思われる。第五・第六球根群からは、まだ花芽伸長の兆しが観られない。日照環境のもっともよろしくない地帯に当る。人間にとってはわずか数メートルの違いでも、植物の反応は敏感だ。

 奥詰めの第七球根群は、もっとも旺盛だ。すでに五花が咲き揃い、なおも多数の花芽が続いている。敷地東側空地の最北端ではあるが、建屋裏手に沿って直角に西へと向う曲り角に位置しているため、わずかに浴びられる西陽や風通しの関係など、環境に優位があると見える。
 いずれにもせよ東側ブロック塀に沿ってが、拙宅における彼岸花の生息地帯であって、南にも西にも北にも、球根群を観かけることはない。