一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

念願の植替え



 見よう見まねと云うが、それどころじゃない。観たことも習ったこともない、当てずっぽうの我流だ。規矩を外れているに決ってる。根付くかどうかは覚束ない。『野ざらし紀行』ではないが、汝が性の拙きを泣け、である。とにもかくにも、第二球根群の傍に引越した。


 先陣を切って花の咲く彼岸花第一球根群は、拙宅敷地のうち将来接収される部分との境界から、ほんのひと跨ぎの場所に生えている。早晩もっと奥に植替えてやらねばならぬと、長いあいだ考えてきた。
 今年こそはと考えながら、時機を逸した。花が了って、球根群が身軽になった好機に、手を着けるべきだった。すでに葉がかなり茂り揃ってしまっている。が、もはや先延ばしもならない。無謀を承知で断行する。

 剪定鋏で葉を刈込む。植替え後の球根の負担を軽くしてやるためだ。ニラを切るような手応えだ。密集する球根群の外縁が見えた。周囲のどのあたりからスコップを突き入れたらよいかの、見当もついてきた。
 いくらか余裕をもたせて、大外から掘り回してゆく。最後は球根群の直下にスコップを差込み、テコの力学でゴボッと掘りあげた。予想はしていたが、たいそう巨きな球根群だ。これほど集合しなければ、あれだけの花が咲かないのか。それとも密集し過ぎて効率が悪いのだろうか。

 中央へスコップの先を強引に突刺して、球根群をまっぷたつに割る。新天地での増殖の余地を残してやるべく、二か所に植替えるつもりだ。こびり付いている土だの細かい根だのは、できるだけそのまま着けておく。
 運悪くスコップの先で断ち割られてしまった球根が、生なましいミルク色を見せて転がる。仕方ない。球根には猛毒があるという。取扱い要注意だ。あとで軍手をよく洗って消毒しておかねばならない。

 大ぶりの洗面器ほどの穴が残った。枯草山からひと抱えの乾燥枝葉を運び、揉んだり千切ったりしながら、ぎゅう詰めにする。地中細菌が必要だろうから、途中で薄く土をかける。また詰める。またかける。
 なん年もかけて朽ち枯れて、このまま土に還ってくれてよい板切れで蓋をし、上にブロックを乗せる。しばらく経てば土が凹んでブロックが沈んでくるだろう。そのときはまた、枯草を足してやればいい。


 新天地は東側塀際の、第二球根群に近いあたりだ。洗面器大の穴をふたつ掘った。過日、草むしりのついでに穴を掘って、瓦礫や異物をかなり除去し、枯草とともに野菜屑や期限切れ鶏肉のきれっぱしなどを埋めこんだ場所だ。今掘ってみれば、もとはなんだったか見分けもつかぬ状態となっている。
 地上部を虎刈りにされて、ふたつに断ち割られた、最前までの第一球根群が、それぞれに移封された。時期も不適当、知識技術も皆無につき、生き延びられるものかどうかは、かいもく判らない。
 ともあれ、撮影も含めて一時間の本日作業を了える。それ以上は、当方がもたない。