一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

新体制



 わが地区では十月一日から、ゴミの分別収集方法が一部変更された。

 一言で申せば、樹脂ゴミとして分別する品目の範囲が広がった。処理および再生技術が進歩したのだろうか。それとも分類作業の工程がより精密に改良されたのだろうか。
 拙宅町内では、月曜日が資源コミの回収日だ。従来は回収地点に色違いのコンテナ三箱とネットの大袋ひと張りとが設置された。コンテナはそれぞれ缶用(スチール缶もアルミ缶もその他の合金缶も可)、ガラス瓶用、ペットボトル用だ。ネット袋はその他の樹脂ボトルや発泡スチロール製トレー類の混合用である。
 今回の変更によって、コンテナ三箱(三色)はそのままだが、ネット袋が姿を消した。

 火曜日は古紙と古布の日だった。紙については、古新聞・段ボール・厚紙ボール紙・牛乳その他の飲料パック・包装紙や広告ビラや一般用紙(ヤレ原稿)の五分類で、それぞれ十文字に紐がけしてまとめるようにと指示されてある。それら以外の汚れ紙・しわくちゃ紙・きれっぱしなどは、生活ゴミとして生ゴミなどと同じ扱いへ回される。
 布については、タオルや肌着はよいとして、衣類からはボタン・ファスナーを外したうえで、半透明のゴミ袋に詰めて「古布」と目立つように明記しておく。
 今回の変更により、ここにもうひと袋が加わることとなる。樹脂ゴミである。月曜日にネット袋に投じていたゴミに加えて、より多種の樹脂ゴミをこの袋にまとめることとなった。発泡スチロールやビニール紐は三十センチ大に砕くなり切るなりして入れる。樹脂製のコップや洗面器やハンガーも入れる。ラップやチルド食品の調理袋や、食品の小袋類(醤油・わさび・からし他)も入れる。ただし水洗いしてからだ。頑固な汚れが落ちなければ、生活ゴミと同じ扱いへと回す。
 その生活ゴミ・生ゴミなどは、水曜日と土曜日の週二度回収である。

 じつはかねがね首を傾げてはいたのだ。分別観念が急速に普及した時分に、これは紙製品だろうか樹脂製品だろうかと、細かい商品包装や容器にまでしきりと眼配りしたものだった。「プラ」と明記された小さな四角形のマークを視逃さぬように気を配った。私の暮しはいかに種類多くの「プラ」に囲まれてあるかと、呆れたものだった。
 しかし世間に分別習慣が浸透するにつれ、小さな「プラ」は生活ゴミに投じてもよろしいことになり、定着してしまった。だったら「プラ」マーク表示の意味はなんだったのだろうか。いささか拍子抜けの感もあった。

  
 申すまでもなく、規制は少ないほうが助かる。煙草やチョコレートの箱を覆うフィルムは「プラ」だが、ディッシュと一緒に屑籠へ放り込んでもかまわなかった。コンビニでカレーや炒飯を買うとサービスしてくれる樹脂スプーンやフォークくらいだったら、屑籠へ放っても差支えないと云われてしまった。歯ブラシやボールペンも似たような大きさだ。
 たしかに世話無しではあるが、それでは「プラ」マークの顔が立たぬではないかとの想いがあった。

 それが今回の変更で、かなり厳格になったわけだ。大小にかかわらず「プラ」マークを付された品はすべからく分別すると、心掛けてよいていどとなった。ことに発泡スチロールの扱いが明確に規定されたことが大きい。
 むしろ汚れたものを排除するとの方針が優先されてあるようだ。食品汚れが衛生問題に支障をきたすのを懸念してのことと思われる。当然だ。生活ゴミ・生ゴミと一緒に燃やしてしまうほうがいい。

 さて私も、新体制を組まねばならない。過渡期の措置として、居間と台所のゴミ袋を集めた。口を大きく開いた新たなふた袋を床に置き、分別し直した。煙草の箱のフィルムやキャンデーの粒包装など、細かいものまで含めると、相当数量があらたな分別袋へと移行した。それに従来月曜日のネット袋に投じていたゴミまでをも加えると、けっこうな量のゴミ袋ができた。むしろ生活ゴミ・生ゴミよりも大きな袋となった。今後いつもかようだとは思えぬけれども。
 普段から細長いものは結び、容積空間を発生させる形状のものはキッチン鋏で半分に断つ習慣だから、ゴミ袋の密度は確保され、重量も一人前だ。

 新体制はそればかりではない。居間にはふだんから屑籠をふたつ並べておくのが、おそらくは便利だ。過渡期の措置を今後とも続けてゆくわけにはゆかない。かといって屑籠ふたつ方式がもっとも合理的とも思えない。とにかくやってみる。そのうえで修正しようという気分である。