一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

ゴミ作り


 一昨年の確定申告の下書き計算用紙が、底のほうから出てきた。

 下駄箱の脇にちょいとしたデッドスペースがあって、以前は傘立てを置いてあったのだが、近年はコンテナ籠を嵌めこんで、ひと目で不要と判る広告チラシや DM などの放りこみ場所としてある。コンテナが二段積みとなり、その上にダンボール箱までが載っている状態となった。積年の片づけ課題である。
 このさい着手しようと決断し、眠いような眠くないような曖昧な時間帯となる深夜の、夜鍋作業とした。

 ほどよい分量づつダンボール箱に取って、デスクに運ぶ。眼を離しても差支えないようなユーチューブ番組を観ながら作業する。昨夜は初期『水戸黄門』連続二時間半という番組だった。東野英治郎の黄門さまに、杉良太郎横内正の助さん格さんだ。今想うと、弓恵子って綺麗な女優さんだったなあ、なんぞと改めて考える。
 一昨夜は『夕刊フジ杯争奪 女流麻雀リーグ』だった。半荘三回の一試合を、休憩をはさんで丸ごと放送するから、長尺ものである。マニアというほどではないが、山脇千文美か佐月麻理子が打つ対局は観ることにしている。

 まずは仕分ける。アート紙コート紙光沢紙の A4判系と B5判系、その他雑紙の A判系 B判系、大小の封筒類、包装紙と分類不明紙とはひとまとめとして、おおよそ六分類だ。新聞用紙や厚紙・段ボールはあらかしめ別収納してある。冊子類も別保管してはあるものの、未開封の大封筒から冊子や返信用封筒が出てきたりするので、油断がならない。
 冊子とも云えぬ豪華カタログ類があんがい厄介だ。不動産や金融関係の大型 DM から出てくる。ホチキスを外さねばならない。昔なら指で強引にむしり外したのだったが、最近はピンセットや鋏の先端を用いるようになった。外したホチキスは、缶珈琲の空缶に入れてゆく。
 空になった大型封筒や返信用封筒は、あと二方をペイパーナイフで裂いて平たくする。これもあんがい鬱陶しい作業だ。ふたつ折りで結束することになる大型封筒は裏返しに折って、白を出しておく。
 包装紙類も乱雑に折られたままだから、裏白を外にして定型に折り直す。

 どうせ巨大焼却炉で一気に燃やされるか、再生のための溶融処理炉で一括処理されるのだろうに、そうまでする必要があるのだろうか。あるまい。これは趣味のゴミ作りである。
 サイズ順・用紙順に積上げる。どうせひと結束にするのだから、型分類してさえおけば用は足り、光沢紙と雑紙の分類は無駄でなないかと、思われるむきもあろう。ところが結束時の紐の締り具合が、断然違うのだ。同じ材質の紙が集合したときの弾力・反発抵抗力・滑り力・締り力、それぞれがどれほど異なるものか、仕事で紙をあつかった覚えのある者なら、幾多の失敗経験とともに知っている。

 底のほうから一昨年の確定申告の反故が出てきたのには、鼻白んだけれども、ともあれ二年分の紙ゴミ出しの準備ができた。新聞の定期購読をやめてしまったから、古新聞は少ない。週刊新聞と大ニュースのさいにスタンド買いしたぶんだけだ。
 厚紙・ダンボール・牛乳パックについては、数か月に一度まとめて出してきたから、さほどの量とはなるまいが、それでも拙宅内にはまだ手着かずの領域もあるから、予測不能の面倒は避けられまい。わが町内の古紙回収日は毎週火曜日となっているが、それまでの課題だ。
 さらに古布、プラ、発泡スチロールと続く。ものぐさの付けが回ってきただけのことで、すべて自業自得ではあるものの、陽暮れてなお途遠し。