一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

徹夜明け



 まがりなりにも社会人だった時分に較べれば、わずかな枚数しか年賀状を準備しない。郵便局にて購入する枚数を、昨年よりまた十枚減らしてみた。思わぬかたから頂戴して、返信が必要な事態にでもなったら、そのときに必要枚別だけ追加購入して間に合せようとの算段だ。
 プリンターによる宛名印刷は、したことがない。手持ちの設備にその機能が備わってはいるが、採用したことはない。裏面の印刷は以前に三年ほど、外部発注したことがあるが、効果イマイチなのに飽きて、やめた。
 枚数も年ねん減る傾向だし、手書きでよかろうとは思うものの、画にも書にも心得のない身には、気の利いた賀状など描きかねる。やむなく小学生の賀状さながらに、ゴム印ペタンという按配となる。

 今年こそ作業前倒しでと、毎年心づもりする。が、毎年ジングルベルが聞えてきても、作業に入らない。今年もいよいよ待ったなしで、夜鍋作業を決断した。今夜も読書は捗らない。
 BGM 代りにユーチューブの女性雀士たちの対局動画を流しっぱなしにしてある。山脇千文美か佐月麻里子かが打った局を検索している。女性麻雀界の変化はただ今風雲急を告げている。若手の川上レイや安藤りなにも注目している。

 まだ投函には至らぬ作業なかばのひと区切り。日の出直前にいささか疲れた。とはいえ今から就寝しようものなら、正午近くまで起きない。午前中にと心づもりしていた金剛院さまへのご挨拶と墓掃除とがフイになってしまう。やむをえない、それらを済ませてから午後にでも眠るかと肚を括った。
 年内最後のゴミ収集日だ。家中の屑籠を集めて袋詰めし、階上階下の流し場の排水溝ネットを交換した。
 まだ時間が余る。小腹が空いたので、玉ねぎ半個刻んで鍋の湯に投じ、浅く火が通ったら「マルちゃん正麺(醤油)」を投じる。茹であがる一分前に玉子を一個落した。トッピングは黒胡麻とアオサ粉。

 まだ時間がある。カボチャを炊く。メキシコ産だ。北海道産よりも安い。国内産が払底したころメキシコ産が出てくる。冬まっただなかともなれば、ニュージーランド産が出てくる。味の違いは、私には判らない。
 出汁巻玉子を焼く。紅茶を六百ミリ沸かす。ぬるま湯で割った蜂蜜水八百ミリを五百ミリボトル二本に等分する。いずれも冷ましに入るから、シンクも電子レンジの前も、鍋だの皿だのが立込む。明日までの飲料水は万全だ。

 すでに窓は陽射しに輝いている。墓詣りにはもってこいの空模様のようだ。幸いにして睡魔の大襲撃もやって来なかった。が、油断禁物だ。出掛けるまでのあと一時間半を、さていかにして過そうか。