一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

味噌

 味噌について、喋りたかったんだけれども……。

 パソコン、あい変らず不具合中。わがパソコン顧問に電話で窮状を報告・相談。
「第一感は熱ですね。この暑さです。第二感は内部にガタがきているのでしょう」
 とりあえず、電源を切ってコードジャックも引抜いて、一夜明けた。息を吹返さない。どこかの山道の、風景静止画像が、ビクともしない。

 飼い主が往生しながらも、扇風機と頻繁なる冷水シャワーと、アイスノン枕と熱さまシートとで、話題性を愉しみながら辛抱しているというのに、機械の分際でエアコンを所望するとは、料簡違いというものであろう。
 まあ、使用年数といい、毎日の通電時間といい、私以上にくたびれた年寄りなのかもしれぬが。それにしても、である。機械のくせに、動かないでは困るのである。隠居所に退いていた7搭載B機が、思いもよらぬ臨時招集に遭って、かくは急場をしのぐべく緊急登板。まことにイライラする超低速千鳥足歩行をもって、かろうじて時間稼ぎに従事している。

 久かたぶりに味噌を買った。サミットストアでだ。ディスカウントスーパーを標榜するビッグエーで、たいていの食品は間に合せるが、サミットでなければならぬ品が、いくつかある。大別すれば三要件となろうか。
 一は、弁当・おにぎり・寿司ほか。本部商品センターからの仕入れ商品と、自店厨房にて調理・調整した商品とでは、品質にあまりの差がある場合。
 二は、梅干・らっきょう漬・にんにく漬。私が常時買うのは三商品だが、かつての経験まで含めれば、たくあん漬、胡瓜・茄子ほかの糠漬や味噌漬の類。昆布その他の佃煮類など。両店にあるし、ワンパック価格はビッグエーが勉強価格なのだけれども、じっさいにフタを開けて、日々の食卓に置いてみるとねぇ。粒の揃い具合とか、まあいろいろ。
 三は、高級品からお徳用まで、豊富な品揃えのなかから選びたいもの。今回の味噌がこれに当る。塩や即席出汁、干し椎茸や干し海藻など乾物の一部、胡椒・唐辛子はじめ香辛料類もさよう。
 たゞし醤油や砂糖や料理酒、ケチャップにマヨネーズなど、世にいろいろあるとは承知でも、私にはこれで十分結構だと決断済のものは、ビーグエーが重宝だ。自家消費用の日本酒・ビールもさようである。

 味噌については、どう選んだらよいか判らず、ひところは大メイカー品の庶民向けヒット商品を愛用していた。袋に一休さんが印刷されてあったり、囲炉裏端でチャンチャンコを着た女の子が印刷されてあったりする商品である。それで十分、口に合った。
 が近年、米どころ酒どころ、そして麹どころにお住いの友人から、二種類の味噌詰合せ箱を頂戴するようになった。ともに美味い。が、こんなにも異なる。唸らざるをえなかった。
 老人用食事改革の一環として、判で捺したような毎食味噌汁という習慣を捨てた私は、そうそう味噌を消費しない。野菜に酢味噌ドレッシングをかけて、「ぬた」風サラダにする程度だ。いたゞきものの極上味噌で、春夏秋冬ほゞ間に合ってしまう。
 が、どういう加減か、じつに久かたぶりに味噌甕が底をついた。で、サミット味噌売場となった。

 現役社会人として出張に明け暮れしていたころ、各地の牛乳と並んで味噌にも、気を惹かれたものだった。いずれの地方の味噌にもそれぞれ所以も必然性もあり、美味かった。が、自分の日常ではこれは使わぬなと、消去法にかける味も、あるにはあった。とはいえほとんどの味噌は消去されぬまゝだ。それでよろしいのか? 一休さんや囲炉裏端の少女だけで、私は生涯を了えるのか?
 味噌を替えてみようか。少し迷ったあげく、今回は「無添加 田舎みそ」とした。

 写真撮影も済ませたのだが、7のB機ではどうアップするのかが解らない。画面のレイアウトがかなり異なる。いゝところまではゆくのだがもうひと押し、最後の貼付けがうまくゆかない。写真は以前の使い回し。わがサラダ、ロニョーン・ドゥヌターとする。