一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

ぞろ目

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空海(774-835)

――口 上――

 西高東低の気圧配置とか。まだまだ風の冷たい日が続いております。雪国では、記録的な豪雪の後始末に、たいそうお骨折りとうかゞっております。お住いの地域では、いかゞお過しでいらっしゃいましょうか。
 迎春のお年賀以来でございますが、ひとことご挨拶申しあげます。

 一昨日未明のことでございますが、いつものごとく「ラジオ深夜便」を聴きながら台所をいたしおりますると、音楽コーナーにて、題名に二人称の付く唄特集を放送しておりました。
 歌謡曲・フォーク・グループサウンズ・ニューミュージックほかあれこれ、「あなた○○」「おまえ○○」「君○○」「あんた○○」「おまえさん○○」「YOU○○」。いやぁ、あるもんでございますなぁ。
 おぬし、そち、そなた、そのほう、てめえ、などはさすがにございませんでしたが。

 日本語は、人称を示す言葉がたいへんに数多い言語として、世界に聞えておりますそうで。時代性・地域制・階級制・性別・職業などを映しまして、多彩だそうでございます。豊かな国語の国に生れて幸せだと、改めて痛感いたしました。
 お勉強される外国人さんには、まことにお気の毒さまではございますが、なぁにご心配にはおよびません。昨今日本人だって、怪しいもんでございますから。

 ときに「ラジオ深夜便」がいかなる着想から、二人称タイトルの唄を特集いたしましたかと申しますと、放送日が二〇二二年の二月二十二日、二ばかりが居並ぶ珍しい日に当っていたからだそうで、つまりは「二」に因んだ由にございました。
 なるほど、これ以上「二」が並ぶ年はとなりますと、二二二二年、あと二百年も先でございます。待ちきれる視聴者さまは、まずいらっしゃいますまい。
 めったに迎えられぬこの日を記念し、話題に採りあげ、ともに慶びあう値打ちは、おゝいにありそうでございます。

 ところが、なにごとにも上には上があるもので、その日の夜更けにSNS上で「ヤッターッ」という題の投稿を眼にいたしました。存じあげぬかたではございましたが、ふと生じましたる出来心、クリックして覗き見にうかゞってみますると。
 ご投稿はお若い男性。ご交際相手らしき女性との、仲睦まじきカップル写真が挙げられております。添書きが「二〇二二年二月二十二日、二十二時二十二分二十二秒を、彼女とキッスしたまゝ、通過したぜぇ!」というものでございました。

 ダカラナンダッテンダ、テメーッと、つね日ごろの手前でしたら不機嫌になるがごとき投稿でございましたが、その無邪気さと申しますか、あまりにアッケラカンとした楽天性に、思わず大笑いたしてしまいました。
 平和ですなぁ。よろしいですなぁ。いえ、皮肉なんぞではなく。

 さて前置きが長くなってしまいました。申しわけもございません。
 記念日には一日遅れてしまいました。こういう間抜け加減が、いかにも手前らしいと、お嗤いいたゞける点かもしれませぬが、今から五時間ほど前のことでございます。
 おかげさまで、当「一朴洞日記」合計アクセス数二万二千二百二十二を突破いたしましてございます。立上げましてより、二百九十七日目のことでございます。

 ご承知いたゞいておりますように、さしたる特技・特色もなく、話題性・情報価値もございません。当然ながら、読者数もいっこうに増えてはまいりません。ごく限られた読者さまに向けまして、老残の愚痴だの、今となりましてはなんら値打ちもなき過去の記憶断片だのを綴ってまいりました。よくもまあ、続いたものでございます。

 書いた手前もいかゞかとは思いまするけれども、アクセスしてくださったかたがたもまた、いかなるお考えでいらっしゃたものでございましょうか。
 ともかくもさような、まことにありがたき読者さまたがたに支えられまして、この二ぞろ記念日を迎えることができましてございます。

 世間さまの二ぞろの日よりも、一日遅れではございまするが、手前どもの二ぞろ達成日を機といたしまして、日ごろ怠っておりますおん礼を申しあぐべく、ひとこと、ご挨拶させていたゞく次第にござりまするぅ。(チョン!)
 はっ、本日のタイトル写真でございますか。はい、お大師様、遍照金剛空海でございます。同行二人、なんちゃって。(チョンチョン!)