鳥たちに、冬のおやつを確保しておられる。
郵便局まで、はがきを買いに行った。数日前に十枚買った。手書き用紙だ。いただきもののお礼状を書き始めたら、またたく間に使い切ってしまった。ずいぶんお心づかいをいただいているもんだ。すでに書いて投函できたのは、食品のご恵贈へのお礼だけで、ご著書やお作掲載雑誌のご恵送お礼については、まだ手着かずだ。遅れに遅れている。まことに面目ない。で、追加を買いに行ったわけだ。
車輛通行のない裏道を歩く。門構えの立派なお屋敷の塀の内では、すでに葉を落し尽くした柿の木の梢近くで、秋の実の色が午前の陽光に輝いている。地元の旧家で、近隣住民であれば知らぬ人とてない、地主さんご一族のお屋敷だ。
歩を停めて、しばし眺めずにはいられなかった。
戻ると、駐輪スペースの端っこと門扉下の隅っことに、落葉が溜っている。拙宅敷地内にひと株だけ残った花梨の樹の落葉である。どういう風のいたずらか空気の流れの自然からか、いつも決った場所にしか溜らない。さいわい今日も、午前の陽光はしごくうららかだ。風もない。このまま屋内へ入るのはもったいない。日向ぼっこを兼ねて、掃き集めることにした。
昨年までであれば、かように悠長に構えてはいられなかった。桜の枯葉が、毎日大量に吹き溜ったのである。さすがに毎日は対応しかねたが、一日おきかせいぜい二日おきには箒と塵取りを手に往来へ出て、拙宅前のみならず向う三軒両隣のご門前を掃いて回らねばならなかった。今年は暢気なもんだ。
まず門扉の内に所を視さだめて穴を掘る。シーズン最初だし、長時間作業する気もないから、王道の飛び石脇を掘った。いく度となく掘返してはあれこれを埋めてきた箇所だから、まともな土となっているし、瓦礫もほぼ拾い尽してある。スコップは楽に入る。
枯葉を掃き集めて、投じる。嵩ばかりが大きく盛りあがるから、体重をかけて踏んづけ、足踏みする。カサカサと枯葉が砕けてゆく音がする。粉になるまで完全に踏んづけるには及ばない。掘りあげた土を掛けもどせさえすれば足りる。如雨露に一杯の水を差す。少しでも早く枯葉と土とが馴染んでほしいからだ。それにこのところの晴天続きで、土も乾き気味だったから、ちょうどいい。
砕けた枯葉の嵩が減って、地表面からほどよくさがったら、さっき掘りあげて脇に山としてあった土を掛けもどす。スコップの先でよく突く。両足で踏み固める。そしてもう一杯、如雨露で水をかける。
およそ二十分間の作業だった。郵便局への行き帰りを含めて、午前の日向ぼっこにはちょうど好い時間だ。
地主さんのお屋敷の前では天を仰いで、青空を背景に秋の実。自宅では身をかがめて穴を掘り、花梨の葉を掃き集めては踏んづけている。