一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

雨あがる

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 肌寒さがぶり返したような数日だった。明日からまた、暖かくなるらしい。

 雨はあがった。草木はまだ、ぐっしょり濡れたまゝだ。草むしりには適さない。で、洗濯と買物の日とする。
 ずぼらを決めこみ、溜るにまかせてきたものを搔き集めて、大袋ふたつに詰込み、肩にひっかついでコインランドリーへと出掛ける。サンタクロース二人ぶんだ。
 ひと袋は肌着・靴下・カッターシャツ・ジャージ・パジャマほか普段着類。もうひと袋は上掛けとシーツ代りのタオルケット・枕カバー代りのバスタオル・汗拭き手拭いや布巾がわりのハンドタオル類ほか、タオル地のもの。
 それに「アタック」の箱。洗剤はこれと決めてきた。前回ちょうど底を突いたので、空き箱とビニール袋入りの詰替え用。

 商店街では、ながらく休業していた店がだいぶ戻ってきている。が、戻ってこなかった店もある。インド・ネパール料理を標榜していたカレーハウスは、廃業もしくは移転したらしい。青果店というほどでもないが、農家直送の野菜を小規模に販売していた店は、外装もシャッターも取外されて、内装工事の作業員数名が入っていた。
 それぞれにギリギリまで耐えに耐えた果てに、苦しい判断を迫られたのだろう。

 わがホームグラウンド「祭や」が、珍しく開いている。ひと声掛けると、マスターのヨッシーこと吉田さんが、つねに変らぬ快活な表情で飛出してきた。
 「今日から再開です。まだ空気の入換えていどですが」
 夜の酒場部門の再開には、もう少し時間が必要らしい。午前十一時ころから午後三時半ころまで、まずはランチタイム営業だという。デリバリーを試みるべく、ウーバーイーツと契約したという。
 応援したくても、どうやらまだ私の出番ではないらしい。

 長い休業期間、じっとしていては顎が干上ってしまうので、ヨッシー派遣社員として、会社勤めをしてきた。柔軟な吸収力と体育会系のガッツを兼ね備える男だから、次つぎ派遣された先ではいずれも重宝され、契約更新を求められる。で、契約期限の切目の具合があって、夜の酒場部門はまだ再開できぬらしい。
 といっても、彼の将来の夢も生甲斐も店にあるから、派遣先でいくら可愛がられて、給料アップしてくれても、そのまゝ会社員になるつもりは、これっぽっちもない。いずれは戻って来ることだろう。
 まず再開する、昼間の食堂部分は、相棒のチイママさんがご担当なさるようだ。

 ろくに看板も出さず、なに屋さんがこゝで営業しているかも知らぬ近隣住民すらあるのが、ヨッシーの一貫したやりくちだ。行列ができるような商売はしないが、一定数の熱心な定連が途切れたことはない。
 居酒屋が本業だが、食堂部分もきっと、地味に長生きさせることだろう。

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 さて洗濯。タオルケット二枚とバスタオル・ハンドタオル類を中型洗濯機(三百円)に、その他の衣類を小型(二百円)に。
 詰替え用ビニール袋「アタック」の封を切って、袋ごとすっぽりと空き箱に収める。ぴたりと収まるように設計されている。むろん同じ容量で箱入りよりも安い。専用スプーンも前回のものを流用。各洗濯機に一杯ずつ。で、三十五分から四十分。

 その間に買物。今日は川口八百屋でいつものニンジン・カボチャのほかに、今年初めてキュウリを買ってみる。暖かくなったら、そりゃまずキュウリの酢の物でしょう。
 ビッグエーでは、鶏胸肉の冷凍パック・洗いゴボウ・納豆・小肌酢漬け・大豆水煮・竹輪。それに濃縮カルピスと缶珈琲の補充。

 いったん帰宅して、冷蔵庫に収めるべきは収めてから、コインランドリーにとって返す。洗濯機二台分をまとめて乾燥機一台へ放り込む。入れすぎ注意ラインの上限イッパイ近くまでゆく。三十分三百円。
 旧い友人が送ってくれた同人雑誌を読む。随筆によると、彼もワクチンにイマイチ信がおけず容易に決断できずにいるらしい。
 家から持参の缶珈琲のプルを引く。ランドリー前の自販機なら百円だが、ビッグエーで買えば五十八円(税込)だ。
 乾燥完了の電子音が鳴ったら、衣類だけを取出し畳んで大袋へ。予想したとおり、タオルケットは縁の折返しがかすかに湿っぽい。タオルケットとバスタオルだけを乾燥機に戻して、もう十分(百円)。雑誌の続きを読む。

 帰りの荷物は軽い。商店街の雨はすっかりあがって、かすかに陽が射してきたようだ。戻って来られなかった顔も、二三あるけれども。