一朴洞日記

多岐祐介の老残妄言

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

めだか

わずかに

「駅前に、お好み焼の露店が出ることあるでしょ。マスター、買ったことある?」 「えゝ一度だけ、どんなもんかと思って。美味かったですよ」 「あんまり繁盛しているようにも見えないけど、採算とれてるんだろうかね。時どき気紛れにしか出ないってことは、…

スニーカー

そんなところ

鉄道愛好家ではないし、写真趣味もないから、大きなお世話と云われればそれまでだが、あの撮り鉄と称ばれるかたがたって、本当に鉄道ファンなのだろうか。 埼玉スーパーアリーナでのこと。わがレッドウェーブにとっては、今シーズンのセミファイナルに残れる…

つばめ

♪もしもし 家出をしたのか 娘さん 君の気持もわかるけど 郷里(くに)じゃ父さん母さんたちが 死ぬほど心配してるだろ 送ってあげよう 任せておきな 今なら間に合う終列車 (『若いお巡りさん』二番、作詞:井田誠一) 彼女の郷里は新潟県柏崎。郷土の誇りは…

薄暑

走り梅雨

貧しい

久かたぶりに作った肉じゃがが、思いのほかまともに出来たのに味を占めて、もう一度作ってやれと、思いたった。作り置いた分を食べ了えたし、いただき物のじゃが芋と玉ねぎが、まだふんだんに残っていたからだ。豚小間と人参と白滝とを買込み、さて明日は、…

よもぎもち

一九五六(昭和三十一)年、曽根史郎が歌って大ヒットした『若いお巡りさん』。紅白歌合戦にも出場した。作詞は井田誠一。 ♪もしもし ベンチでささやくお二人さん 早くお帰り夜が更ける 野暮な説教するんじゃないが ここらは近ごろ物騒だ はなしの続きは明日…

余花

ストン

最晩年の父は、認知症による要介護者だったが、同時に、膀胱にがんも抱えていた。しかし高齢になってからの発症で、がん細胞の転移力が弱かったものか、他臓器への転移は、最期まで確認されなかった。それもあって、発見が遅れたのでもあった。 じつを申せば…

暮の春

腹立ち

三週間前から、拙宅の門柱脇に自転車が一台、放置されている。子供用自転車だろうか、それとも今様の、車輪は小ぶりでも大人用のお洒落自転車なのだろうか。いずれにせよ、うちの次郎(我が愛車の名)より数段真新しく、値段もよろしそうな姿をしている。 当…

豆ごはん

津軽

津軽三味線奏者の只野徳子さんを、カッコイイ女性だと思っている。 名人とも、津軽三味線を全国的に有名にした人とも云われた、先代の高橋竹山のライブを、一度だけ聴きにいったことがある。年月はさっぱり記憶にないが、四十年も前だったろうか。邦楽につい…

ぶらんこ

面倒臭い

奈良西大寺の長老が、京都の内裏(内閣府)へやって来た。腰がひどく曲って、眉毛は真白。視るからに修行の生涯を送ってきた高僧らしい姿だ。内大臣(官房長官)西園寺実衡は、あなたふと云々。「いやぁ、お姿を眼にするだに、尊い」と、信仰心をいっそう募…

わさび

出番

親に連れられて、この町へ移ってきたのは、昭和二十九年だったが、すでに「研庄」さんは今の場所にあった。拙宅にとっては、金物屋さん・刃物屋さんというよりも、包丁の研師さんだ。 その研庄さんが、今月一杯で店仕舞なさるという。情報を、買物途上の立話…

垣根直し

あの時

陸上競技のオリンピック種目で、これだけは見逃せないと密かに思っているのは、男子十種競技と女子七種競技 だ。二日間にわたって、短距離走・中距離走・ハードル・投てき・跳躍の、男子は十種目、女子は七種目を競い、総合点で順位を決める。 選手個々に得…

ひこばえ

内的動機

近所に「パティスリー団栗」が開店して、数年経つ。ファミリーマートのはす前にあって、入口から階段を二三段降りた、半地下のような洋菓子店だ。樹木のカラーイラストを焼付けた素通しガラスの窓が、往来に面しているので、ちょっと視おろすように、店内の…

桜餅

あふせ

立川談志さんが、こんなふうにおしゃったことがある。 ――埼玉県熊谷(くまがや)って云うでしょう。あれ、クマガイじゃないのかね。 たしかに上品上生(じょうぼんじょうしょう)の往生を祈願したのはクマガイ直実だし、その史実から名付けられたラン科の山…

さざえ

不良

小澤征爾さんが、こんな思い出噺をされたことがある。 ――学生時代、山本直純先輩が、おい小澤ちょっと、と云うから行ってみた。すると、小澤、お前は頂点をやれ。俺は底辺をやる、って云うんだな。その時は意味解らなかったけどね。少しして、解ったよ。 な…

風船